更新日:2022年6月1日
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カンチャナブリ県(タイ)
I.自治体の概要
- 人口
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- 766,549人(1998年現在)
- 面積
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- 19,484平方km
- 気候
- 温暖湿潤熱帯
- 平均気温:28.1℃
- 年間降水量:2,000mm
- 言語
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- タイ語
- 県都とその人口
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- ムアン地区
- 160,495人(1998年現在)
- 主要産業又は主要産物
- 地域の特色
- カンチャナブリ県はタイの中西部に位置している。バンコクから129kmのところにある。
- 県の総面積の約55%が国有林である。
- カンチャナブリ県は高温多湿である。天候は季節、緯度、時間帯によって異なる。1日の平均最低気温と最高気温は、暑い乾季には15℃から35℃、雨季には20℃から33℃、さらに涼しい時季には10℃から29℃になる。日中の気温は急速に上昇し、4月には最高で40℃に達する。夜の気温は最低で7℃である。
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II.世界自然遺産地域の概要
- 世界自然遺産地域の名称
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- トゥンヤイ・ファイカケン野生生物保護区
- 世界遺産一覧表に登録された年
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- 1991年
- 世界自然遺産地域の面積
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- 6,225平方km
- 自然遺産が自治体に占める地域:6,222平方km
- 世界自然遺産地域の土地所有者
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- タイ王国森林局
- 世界自然遺産地域について
- i.概要
- トゥンヤイ・ファイカケン野生生物保護区は、バンコクから北西に約350km、ミャンマーとの国境沿いに位置している。この野生生物保護区の西部分はトゥンヤイ・ナレスアン、東部分はファイカケンとして知られている。ここには、アッパー・クワエ・ヤイ(メコンとも呼ばれる)とファイカケンの2つの重要な河川システムがある。
- 20年前には、この地域は「タイ最大の最後の原生地域」また「最後の未踏の地」と言われていた。今日でもこの状況は変わっていない。バンコクに比較的近いにもかかわらず、トゥンヤイ・ファイカケンは国内で最も訪れにくい、自然がそのまま残されている森林である。
- 動物保護区の総面積は現在6,225平方km、これはタイ国内では他の自然保護地域の面積の2倍以上であり、現在東南アジアの大陸部で法的に保護されている森林保護区としては最大のものである。これによってこの地域に特有な、乾燥熱帯林の生態系が保護されている。一方落葉樹の森林は火事に弱く、広い範囲にわたって開墾されているため、赤道地帯の雨林よりも危機的な状況にある。
- また、トゥンヤイ・ファイカケンの南北には、貯水池を除いて面積が5,861平方kmにも及ぶ広大な森林保護地区が広がっている。合計すると12,086平方kmになり、法的に保護された自然保護地域としては、東南アジア全体で最大のものとなっている。この規模の面積であれば、森林の孤立化という有害な結果を招く危険性は少ない。
- トゥンヤイ・ファイカケンの動植物は、生物地理的には、東洋・インドマラヤ界に属するインドシナ地区に位置付けられるが、スンダ地区の特徴も有している。また、この地にある保護地域としては珍しく内陸部に位置するため、他の地域では見られない特徴も有している。中国ヒマラヤ、スンダ、インドビルマ、インドシナの各地区に特有の種がこの保護区で生息しており、その多くが希少種、絶滅危惧種、固有種である。
- この保護区が自然保全地域として重要なのは、生物生息地としての多様性と完結性、動植物の多様性、生態系の複雑性が見られるからである。
ii.世界遺産登録理由
- 世界遺産委員会は以下の認定基準2、3及び4に基づいて、この保護区を世界遺産リストに登録した。
- 基準2
進行中の生態学的過程、生物進化、及び人間と自然環境との共生を代表する顕著な例であること。トゥンヤイ・ファイカケンは東南アジア本土において顕著かつ特有のバイオーム(生物群系)であり、中国ヒマラヤ、スンダ、インドビルマ、インドシナの4つの地区の生物地理学的要素と、動植物の特徴を有している。また、保護区は、動植物が安定して生存を続けるのに十分な広さを有している。トゥンヤイのサバンナの森林は、東南アジアにおける乾燥熱帯林として最も完全で安定した例である。
- 基準3
類例を見ないすぐれた自然現象、形成物あるいは自然の美しさの特徴を有していること。保護区は、2大河川とその他の自然など、すぐれた自然の美しさ及び重要な科学的価値といった生物物理学的特徴を有している。
- 基準4
科学及び保全の観点から見て、優れた普遍的価値を持ち、絶滅のおそれのある動植物種の生息地として、重要かつ意義があること。トゥンヤイ・ファイカケンは他に類を見ない生物多様性を維持しており、この保護区が生息分布の限界地域である種の数が多い。多くの種がこの地域に固有であり、28種は国際的な絶滅危惧種であることに加え、少なくとも、東南アジア本土で生息が確認されている哺乳類の3分の1が生息している。
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III.世界自然遺産への関わり
- 世界自然遺産の管理について
- i.管理の法的根拠
- トゥンヤイ・ナレスアン・ファイカケン動物保護区は、1960年の野生動物保護法によって指定された。この法律は、タイにおける動物保護区の指定・管理、及び野生動物保護について、法的・実質的な根拠となっている。「王立森林局」の「野生動物保護部」がその実施を管轄しており、予算は毎年予算当局と交渉して決定されている。保護区に対する管理体制はよく整備されており、現在、王立森林局管轄業務の中でも優先業務となっている。
- 国内法によって、国立公園は一般市民に開放することが定められているが、動物保護区は開放されていない。しかし学生・児童及び自然保護団体による教育的観察等は許されており、調査活動も奨励されている。
ii.管理体制(管理者)
- トゥンヤイ・ファイカケンの管理・保全の責任は、中央政府の王立森林局局長に一任されている。野生動物保護部が王立森林局の監督下で保護区を管理している。なお王立森林局は、農業省の管轄下にあり、農業省は政府の森林政策全般を担当している。農業大臣(政治任命)が政策決定過程に影響を与えることもある。
iii.管理の方策
- 1972年9月4日のファイカケン野生生物保護区、1974年4月24日のトゥンヤイ・ナレスアン野生生物保護区の指定後、以下の措置が行われている。
- ア)守衛事務所(ガード・ステーション)の設置
1982年から1986年にかけてこの地域の保全・管理の安全が確認された時期に、トゥンヤイ南部に4ヶ所の常設守衛事務所と5ヶ所の臨時守衛事務所が設置された。1988年には北部でさらに6ヶ所の守衛事務所の開設が認められた。ファイカケンにはすでに10ヶ所の守衛事務所があり、現在さらに2ヶ所が建設中である。各保護区には、214平方kmごとに1ヶ所、守衛事務所が設置されている(現在の面積は5,775平方km)。
- イ)人員
各守衛事務所には、最低でも担当官(事務所長)1名、レンジャー2名(常勤有給)、守衛10名(臨時雇い)がいる。一方、各保護区の本部にはその2倍の人員が配置されている。ファイカケンは担当官12名、レンジャー30名、守衛124名を有しているが、トゥンヤイは担当官6名、レンジャー13名、守衛約150名を有しているに過ぎない。年間総労働者数は、王立森林局の予算によって変動する。
- ウ)調査事務所
1976年に、ファイカケンで現地調査(フィールド・リサーチ)を行うため、カオ・ナン・ラム動物調査局が設立された。それ以来、この保護区だけで50件以上のプロジェクトが実施されたが、トゥンヤイでは10件ほどしか実施されていない。両保護区共同のプロジェクトも行われている。大半の調査は目的及びその規模からいっても予備的なものであるが、6ヶ月以上(フィールド調査の期間を含む)の期間をかけて行っている約20件のプロジェクトもある。
- エ)保護地域の拡張
1986年に、ファイカケンは野生の水牛生息地及び東部のカオ・ヤイ渓谷の河川流域を含む944平方kmの地域が保護区に指定された。1990年にはトゥンヤイはナム・コアン保全森林に囲まれた小規模植物群落を統合するため、447平方kmの地域が拡張された。
- オ)村落の移転
1987年以来、2,3のフモン(Hmong)村が毎年、保護区の北約80kmに位置するタク県のフォプ・フラ地区に移転している。
- 自治体の世界自然遺産地域への関わり
- i.自治体による遺産地域の管理
- 地方自治体は、保護区周辺の地域住民の意識向上、啓蒙を行う役割を担っている。以前は、貧困者による略奪、伐採、密猟が問題となっていた。この10年間、自治体は国・非政府機関、地域住民などの利害関係者と調整を行い、自然遺産に関する理解醸成・意識向上に取り組んでいる。
- また、住民の生活の質を向上するため、環境にやさしくかつ収入増につながる活動、プログラムを展開している。
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