クイーンズランド州(オーストラリア)(2)
III.世界自然遺産への関わり
A.グレートバリアリーフ
1.世界自然遺産の管理について
i.管理の法的根拠
- 連邦政府が定めるグレートバリアリーフ保護のための法律としては、第一に「グレートバリアリーフ海洋公園法(1975)(連邦法)、いわゆるGBRMP法がある。GBRMP法は、同法が定めるグレートバリアリーフ域内に海洋公園を設立、管理、保全、開発するために制定された。同法により、域内の一部は海洋公園として指定される。
- さらにクイーンズランド州政府は、海洋公園法(1982)(州法)を制定している。同法は、同州政府がクイーンズランドの干潟、潮水を海洋公園として認定し管理するために、GBRMP法の条項の多くを反映している。クイーンズランド州域内にあるがゆえに、連邦のグレートバリアリーフ海洋公園法ではカバーされない様々な棲息地を確実に保護することを主目的にグレートバリアリーフ地域の至るところに州立海洋公園が認定されている(例えばケアンズ、タウンズビル、ウィットサンデー、マッケイ、カプリコーンなど)。こうした棲息地は保護に値する内容のものが多く、潮流間に見られる生物共同体、湾、狭い海峡などが含まれている。連邦政府と州政府の法律は補完関係にあり、またグレートバリアリーフ海洋公園の領域と州立海洋公園の隣接地域も相補し合う関係にある。これによりグレートバリアリーフ地域の多くの区域で、大陸本土高地の水流から沖の珊瑚礁に至るまで、海洋公園の一貫したシステムが及んでいる。
ii.管理体制(管理者)
iii.管理の方策
- 多様な用途を方針としながら海洋公園を管理するための主要な手段はGBRMP法と海洋公園法に基づいて策定されたゾーニング計画である。グレートバリアリーフ海洋公園の各認定地域は、海洋公園の特定区分として指定され、グレートバリアリーフ海洋公園法で定める目的にしたがって利用を分割するゾーニング計画の対象となる。連邦及び州法のいずれもゾーニング計画の立案に当たって、広く一般の参加を認める条項を設けている。グレートバリアリーフ海洋公園法は、海洋公園に属する区画のゾーニング計画立案において以下の事項を要件として規定している。
ア)グレートバリアリーフの保存。
イ)グレートバリアリーフ地域の合理的な利用を認めると共に、グレートバリアリーフを保護するための海洋公園利用の規制。
ウ)グレートバリアリーフの資源開発による影響を最小限に留めるための開発活動規制。
エ)大衆の鑑賞、娯楽の為グレートバリアリーフの一部地域を保留すること。
オ)グレートバリアリーフの一部地域については、科学研究の目的以外では人の手を加えず自然の状態のままで保存すること。
- ゾーニング計画は、その対象となる各ゾーンでなされるどのような行動に権利があるのか、海洋公園の許可を必要とするのか、何が禁止されているのかを列挙している。さらに、特に高度の利用が見られる地域(例えば、ケアンズ沖、ウィットサンデー地域など)に関しては、管理計画が用意されている。さらに、海洋公園の設立、保全、開発に関連した研究調査または科学研究以外の目的でグレートバリアリーフ海洋公園法が指定する地域内での鉱物資源の採取は、同法により禁止されている。
2.自治体の世界自然遺産地域への関わり
i.自治体による遺産地域の管理
- 自治体による遺産地域の管理地方自治体は、グレートバリアリーフの管理に直接の役割を持たない。しかし、地方自治体は、ゾーニング計画及び管理計画立案における主な利害関係者であり、計画策定の上で大きな影響力を持つと思われる。さらに、グレートバリアリーフ全域に及ぶ海岸部の開発を規制する諸計画(例えば戦略案、市街地計画、開発規制計画など)の立案を通じて、地方自治体は、グレートバリアリーフ海洋公園の各区が保有する価値の保存に影響力を持つと見られる。
B.中東部の多雨林保護区
1.世界自然遺産の管理について
i.管理の法的根拠
ii.管理体制(管理者)
- 中東部の多雨林保護区は、二州の4主要機関が管理する。クイーンズランド公園野生生物局、クイーンズランド自然資源局、サウスウェールズ州の国立公園野生生物局、州立森林局である。また、小さな地域はモートン・ダーリン・ダウンズ・ラビット評議会とクイーンズランド矯正サービス委員会の管轄下にある。政府とその担当管轄機関の順列は、以下の通りである。
- 北部多雨林保護区の大部分には、管理上の問題を明らかにし、それに優先順位をつけ、また問題に取り組む戦略を概略する管理計画がある。世界遺産が有している価値にふさわしい管理戦略を実施するため、「中東部の多雨林保護区(CERRA)管理の指針書」に手引きと戦略及び一貫した指針が収められている。「世界遺産・中東部の多雨林保護区(オーストラリア)への戦略概観」は、管理担当者が管理規定を作成するに当たって、多雨林保護区の価値に適切な配慮がなされること、また管理規定の策定、実施に一貫性がありよく調整されたものであることを確保するために執筆された。「海岸沿いの景観地の国立公園に向けた火災管理マニュアル」(クイーンズランド州)が作成された。
C.クイーンズランドの湿潤熱帯地域
1.世界自然遺産の管理について
クイーンズランド州政府と連邦政府の政府間協定は1990年に調印され、1995年12月に改定された。この協定により閣僚審議会、湿潤熱帯地域管理局、諮問委員会が設置され、職員が任命される。
i.管理の法的根拠
ii.管理体制(管理者)
iii.管理の方策
D.フレーザー島
1.世界自然遺産の管理について
i.管理の法的根拠
ii.管理体制(管理者)
iii.管理の方策
- クイーンズランド州政府は、1994年にグレートサンディ地区管理計画を同政府の包括的な管理施策として承認した。フレーザー島世界遺産地域はこの管理計画に沿って進められる。
E.オーストラリアの哺乳類化石地域(リバースレー)
1.世界自然遺産の管理について
リバースレーはローンヒル国立公園の一部であり、クイーンズランド州政府が委託するクイーンズランド公園野生動物サービス局が管理している。世界遺産条約を国内で実施し、世界遺産リストに登録の国内遺産の適切な管理を確保する最終的責任はオーストラリア政府にある。世界遺産に登録されても土地の所有権は変わらないが、土地管理活動を若干変更することがある。
ローンヒル国立公園は、先住民土地法や先住民の所有権主張に基づいて、その所有権が先住民に返還された場合には同公園は従来の所有者とクイーンズランド政府との共同管理となる。しかし、その場合でも世界遺産の登録や世界遺産条約に関する連邦政府の義務をなんら変更するものではない。
i.管理の法的根拠
ii.管理体制(管理者)
iii.管理の方策
- リバースレーが世界遺産として登録された価値を保護し、意思決定のための枠組みを与える為に管理戦略が作成された。主な提言は以下のとおり。
ア)リバースレーの世界遺産としての価値(化石や化石埋蔵地)を保護するため、研究や管理を保証する予算基盤を確保すること。
イ)リバースレー世界遺産地区の境界線を拡張するかもしくは、保護地区を創設し、ローンヒル国立公園の外部にある台地遺跡などの更新世台地を含めるようにすること。リバースレーの世界遺産としての価値を保護するためである。
ウ)地勢的特徴、化石埋蔵地、その他の自然資源や文化遺産データを適切に測量できるよう、地理情報システムを確立すること。
エ)リバースレーでの化石採取は、今後も化石採取方法として国際的に認められた方法で行うこと。
オ)実施可能になり次第、先住民レンジャー(文化レンジャー)を任命すること。レンジャーは説明担当者として活動し、研究者に助言を与えるものとする。レンジャー責任者(または可能な場合は文化レンジャー)の監督の下で、事前に合意し許可された条件で古生物学的な活動を行う。
カ)リバースレーの管理に対する地域社会の関与を拡大するため、地域諮問委員会を設立し、科学管理諮問委員会とクイーンズランド環境保護庁に助言を行うものとする。
キ)実施可能になり次第、プロジェクト担当者を任命し、環境保護庁に配属すること。プロジェクト担当者は地域諮問委員会を管理し、主要な利害関係者へのリバースレー関連情報の提供方法を改善し、科学管理諮問委員会との窓口になる。
ク)リバースレーの世界遺産としての価値を紹介・解説する上で、政府機関や地域社会も関与すること。地域社会は情報伝達にも関与する。
ケ)特定の規制の下で、最低60%の化石含有物を各遺跡に保存し、後世の研究の利用に資すること。
コ)リバースレーから採取された全ての化石含有物は、クイーンズランド博物館の所有とすること。
サ)地域社会が化石遺跡や科学者と活動・交流するための価値ある中心地として、リバースレーに基地を設置すること。この基地は、雇用機会に恵まれない地域住民に雇用や研修の機会を提供する。
シ)リバースレーの管理をローンヒル国立公園の他地域の管理と完全に統合するため、実施可能になり次第、ローンヒル国立公園管理計画を完成させること。
ス)近い将来、グレゴリー川道路交差点にいくつかのキャンプ場を建設し、キャンプ場予約システムを確立すること。長期的には、川に隣接する地域は日中の使用に限定し、キャンプは指定地域のみで可能とする。
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