クイーンズランド州(オーストラリア)(1)
I.自治体の概要
- 人口
-
- 3,500,000人
- 面積
-
- 1,700,000平方km
- 気候
- 暖熱帯―海岸沿いは亜熱帯、内陸部は温帯。
- 平均気温:25℃以下
- 年間降水量:1,187mm
- 言語
-
- 英語
- 県都とその人口
-
- ブリスベーン
- 150万人
- 主要産業又は主要産物
- 地域の特色
- クイーンズランドはオーストラリア大陸北東部に位置する。日本の4.5倍の広さがある大きな州である。
- 熱帯多降雨林、内陸部の荒野、世界的に有名なバリアリーフ等多様な景観が見られる。
- 州都ブリスベーンは、州の南東端にあり、サーフィンに適したゴールドコースト、サンシャインコーストや世界遺産として登録されている多雨林がある奥地に車で簡単に行くことができる。
II.世界自然遺産地域の概要
A.グレートバリアリーフ
- 世界自然遺産地域の名称
-
- グレートバリアリーフ
- 世界遺産一覧表に登録された年
-
- 1981年
- 世界自然遺産地域の面積
-
- 348,700平方km
- 世界自然遺産地域の土地所有者
- グレートバリアリーフのほとんどはクイーンズランド州域外にあり、公共の所有となっており、オーストラリア連邦に帰属する。残りのクイーンズランド州に属する地域は、次のような地域を含む。
ア)クイーンズランド州に帰属する公共所有地
イ)連邦が所有する公共の土地
ウ)数件の私有地
- 世界自然遺産地域について
- i.概要
- グレートバリアリーフは、クイーンズランド州東岸約2,000kmにわたって広がり、南はフレーザー島の北部(南緯24度30分)から北はヨーク岬の先端(南緯10度41分)までに及ぶ。この地帯は生物多様性が極めて高いことと、美しく神秘的な自然で知られている。
- グレートバリアリーフは棚状に連続しているのではなく、珊瑚礁が壊れた迷路のようになっていて、中には洲と呼ばれる珊瑚の島もある。グレートバリアリーフには2,600の礁があり、その大きさは1ヘクタールから100平方km以上にもなるものまであり、形も平らなものからリボン上に細長いものまである。個々の礁は、ある個所では200mにも満たない水路で分かれており、また別の個所では20kmも離れている。ほとんどの礁は水中にあるが、干潮時には海面に表れるものもある。
- グレートバリアリーフの個々の礁は、動物の遺骸及び植物や動物の外皮を支える骨格成分である炭酸カルシウムで形成されたものである。グレートバリアリーフ地域には小さい砂地の洲、成長が続く洲、大陸の島なども含まれている。
ii.世界遺産登録理由
- グレートバリアリーフは現存する世界最大の珊瑚礁群で、そのすばらしい美しさと不思議さでよく知られている。生物学的にも最も多様性に富んだ生態系を保持している。このスケールの大きい多様性は、オーストラリア大陸棚の北東部において数百万年をかけて進化してきた生態系の完成度を反映するものと見られる。
- グレートバリアリーフは、次のようなものを保持している。
ア)約4,000種の軟体動物
イ)1,500種を超える魚類
ウ)およそ400種の珊瑚
エ)危急種(Vulnerablespecies)と見なされているジュゴンが大量に生息
オ)脆弱なアオウミガメ、絶滅の危機にあると見られるアカウミガメの世界的に貴重な生息地
- また、グレートバリアリーフ世界遺産地域には考古学的、文化的に意義ある次のような遺跡がある。
ア)アボリジニやトーレス海峡諸島住民の先祖の貝塚やその他の遺跡
イ)30隻を超える歴史的難破船
ウ)島の灯台群(稼動中または廃墟を含む)
- 以上により、グレートバリアリーフは世界遺産条約第2条で定める4つの基準を満たすと考えられる。すなわち、
ア)地球の進化史上主要な段階をよく表している優れた実例であること。
イ)現在も進行中の貴重な地質学的変化、生物学的進化及び人類の自然環境への関わりをよく表す優れた実例であること。
ウ)その構成と特色が希少ですばらしい自然現象であり、最高の自然美が見られること、また絶滅寸前の希少動物の棲息地として存続していること。
- 登録地域には、域内全体を通じて珊瑚礁を取り巻く海域も含まれており、そのすばらしさにおいても登録条件を満たしている。
グレートバリアリーフ(AHCCollection)
B.中東部の多雨林保護区
- 世界自然遺産地域の名称
-
- 中東部の多雨林保護区
- 世界遺産一覧表に登録された年
-
- 1986年、1994年クイーンズランド地域を追加
- 世界自然遺産地域の面積
-
- クイーンズランド州では592,300平方km(全体では3,664,550平方km)
- 世界自然遺産地域の土地所有者
- クイーンズランド州政府、ニューサウスウェールズ州政府
- 世界自然遺産地域について
- i.概要
- 中東部の多雨林保護区は、クイーンズランド南東部とニューサウスウェールズ北東部に及ぶ一帯で、温帯性の多雨林として残るものとしては世界でも最大である。域内には国立公園、自然保護区、植物保護区、州指定の森林その他の連邦保護区がある。この遺産では50以上の保護区が保護されている。
- 現在、ニューサウスウェールズ北東部とクイーンズランド南東部に分散する多雨林は、古代と現代の多くの要素が重なってできたものである。その中には、数百万年にわたるオーストラリア大陸の乾燥化による多雨林の自然縮小、数千年に及ぶアボリジニによる土地管理のための火の利用、19世紀末から20世紀初頭にかけての大規模な農業用整地、20世紀半ばから後半にかけての機械による多雨林や周辺の森林の大量伐採、などが挙げられる。
- 多雨林保護区は、自然を楽しむ様々なレクリエーション活動の場を提供する貴重な資源である。国内外から多くの観光客を惹きつけ、地域社会の経済にも大きく貢献している。
ii.世界遺産登録理由
- 1986年に最初に世界遺産として登録され、1994年に大幅な追加登録があった。中東部の多雨林保護区は、次のような際立った価値を持つ自然であることにより、世界遺産リストに加えられた。
ア)中東部の多雨林保護区にある遺跡は、地球の進化の歴史、現在も進行する地質学的プロセス、生物学的進化、生物多様性などの主要な段階をきわめてよく示すものである。
イ)太古ゴンドワナ大陸の植物や動物の系列が幅広く見られる。その多くは世界遺産に属するものとしてほとんど全面的に規制されている。
ウ)この保護区はまた、普遍的な価値を持つが絶滅寸前の多くの植物や動物の主な生息地になっている。
- この保護区の評価は、まず第一に多雨林に関することに結び付けられているが、混合森林(エコトーン)、疎林、荒野、高地森林などの他の生態系にも価値がある。
C.クイーンズランドの湿潤熱帯地域
- 世界自然遺産地域の名称
-
- クイーンズランドの湿潤熱帯地域
- 世界遺産一覧表に登録された年
-
- 1988年
- 世界自然遺産地域の面積
-
- 8,944,200平方km、境界線の全長約3,000km
- 世界自然遺産地域の土地所有者
- 複数の土地所有者
- 世界自然遺産地域について
- i.概要
- クイーンズランド州の北東に位置し、世界遺産であるグレートバリアリーフ地域に隣接する。南はタウンズビルのすぐ北にあるパルーマ及びスペク山から、北はクックタウンのすぐ南にあるブラック山までの450kmにわたって広がっている。
ii.世界遺産登録理由
- この地域の多雨林は、流動性植物(被子植物)の起源、進化と分布において地球進化史でもとりわけ重要な段階を非常によく示しているため、国際的に評価されている。
- 主な地形としては、海抜600mから900mの険しいまたは起伏の多い高原、標高1,622mの山、海岸の切り立った崖、山脈、丘陵地帯などの高地につながる沿岸の低地などがある。
ダインツリー海岸―クイーンズランドの湿潤熱帯地域(LeoMeier―AHCCollection)
D.フレーザー島
- 世界自然遺産地域の名称
-
- フレーザー島
- 世界遺産一覧表に登録された年
-
- 1992年
- 世界自然遺産地域の面積
-
- 1,810平方km
- 世界自然遺産地域の土地所有者
- 州所有99.5%
私有0.5%
- 州が所有するのは、国立公園、海洋公園、魚類棲息地保護区、湿地保護区、州保有林、州政府が貸付ける土地、未分配の州保有地、連邦保護区、州保有の水資源
- 私有地にはフリーホ―ルド(自由保有不動産)がある。
- 世界自然遺産地域について
- i.概要
- フレーザー島はクイーンズランド南東岸沖にある全長120km、総面積1,653平方kmの島で際立った特徴を有す。世界最大級の砂の島できわめて美しい自然が見られる。
- 砂の堆積が形成する島のダイナミックな自然や砂丘の加齢プロセスは、地質学的、生物学的作用が今も続いていることをよく示している。こうした際立った特色が普遍的な価値を持つことから、1992年12月に世界遺産として登録された。
- フレーザー島は、オーストラリア先住民のブッチュラ(theButchulla)にはキガリ(K'gari)と呼ばれている。数千年に及ぶ文化と伝統を刻む考古学的遺跡が多く残っており,現代のブッチュラ人と彼等の過去とをつなぐ貴重な絆になっている。
ii.世界遺産登録理由
- フレーザー島は、その優れた自然が以下の点で普遍的な価値を持つと認められて世界遺産として登録された。
ア)生態学的及び生物学的プロセスの進行を示す優れた実例として。
イ)超一級の自然現象の実例として。
マッケンジー湖畔―フレーザー島(AHCCollection)
E.オーストラリアの哺乳類化石地域(リバースレー)
- 世界自然遺産地域の名称
-
- オーストラリアの哺乳類化石地域(リバースレー)
- 世界遺産一覧表に登録された年
-
- 1994年
- 世界自然遺産地域の面積
-
- 100平方km
- 世界自然遺産地域の土地所有者
-
- 州
- 世界自然遺産地域について
- i.概要
- マウント・アイザの北、サヴァンナ湾地区に、リバースレーの第3紀系・第4紀系化石出土地がある。これらの化石出土地は南オーストラリア州のナラコートと共に、オーストラリアの哺乳類化石地域(リバースレーとナラコート)世界遺産地域である。
- リバースレー化石保存地区は世界で最も重要な化石埋蔵地の一つであり、国内で最も多くの哺乳類化石が出土した所である。哺乳類化石の集合として、大陸の生物多様性に関する知識を向上させた点でリバースレーの右に出るものはない。ここには2,500万年もの有史以前のオーストラリアの動物の化石が、石灰岩の露出部分に良好な状態で保存されている。それらのなかにはフクロライオン、肉食カンガルー、各種有袋動物、大ニシキヘビ、タスマニアン・タイガーの祖先、カモノハシ、ワニ、コウモリなどの化石がある。
- こうした埋蔵地は多種多様の動物が住んでいたことを明らかにし、その数はそれ以前に国内で確認されていた第3紀系の哺乳類の3倍である。リバースレーの化石動物相はオーストラリア国外の動物相と大きな関連を持ち、国内の他の世界遺産地域と歴史的・生態学的な継続性を見せている。埋蔵地とその動物相はわれわれが過去、現在、及び将来の生物の理解を深める上で豊富な情報を提供する。熱帯雨林、生態系、生物多様性、気候変化、絶滅などに関する我々の理解は化石動物相の研究により深まったが、今後さらに深まるであろう。
- リバースレーは人間の歴史を知る上でも価値を有している。オーストラリア先住民が、大きな気候変化に対応しながらこの地域やその周囲で何万年にもわたって生活し、開拓し、繁栄してきた。また、リバースレーと周辺地域では、従来の所有者と放牧産業との文化的交流の歴史も見られた。先住民は、現在行われているローンヒル国立公園の土地(返還)要求交渉の一環として、リバースレーや周辺地域との彼等の歴史的・現代的関連を証拠資料にまとめている。こうした土地要求交渉の解決が、リバースレー世界遺産を含むローンヒル国立公園の将来的な管理に大きな意味を持つであろう。
ii.世界遺産登録理由
- ローンヒル国立公園のリバースレー地区とナラコート洞窟保全公園は、共同で哺乳類の化石保存地区(リバースレーとナラコート)として1994年に世界遺産リストに追加された。自然遺産としてすばらしい普遍的な価値があり、以下に示すとおり、世界遺産リストへの登録に必要な条件を満たしていたからである。
ア)オーストラリアでは最も豊かで多様な第3紀系哺乳類の化石を有しており、世界でも最大級である。
イ)漸新世から中新世(約1,500万年から2,500万年前)にかけての熱帯雨林哺乳類の集合体としてはオーストラリア唯一であり、そのため、オーストラリア中央部の漸新世―中新世の集合体と、オーストラリア東部の比較的新しい年代の化石埋蔵地を結ぶ唯一の記録である。
ウ)この化石埋蔵地は、第3紀系の熱帯雨林地域に生息した祖先から、大半は乾燥地帯に生息する現在の哺乳類への進化を示しており、進化や環境の変化を証明する根拠となる。
エ)第3紀系熱帯雨林の生物相は、クイーンズランドの湿潤熱帯地域とカカドゥ国立公園世界遺産地域の熱帯雨林との関連付け及び比較を可能にしている。それにより、世界最古で最も特徴的な熱帯雨林の2,000万年にわたる変化の記録となっている。この熱帯雨林集合体の長年にわたる複合的な記録は、熱帯雨林の変化の記録としては世界で最高のものであろう。また、他の大陸における熱帯雨林の多様性や構造との比較としても最適である。
オ)リバースレー熱帯雨林集合体の他の化石生物相や現代の生物相に対する関連性、及び特定の哺乳類系統に関する進化の情報は、現在生存する哺乳類の保全戦略の開発に類を見ない機会を提供している。
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください