更新日:2025年2月19日
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令和7年第1回県議会定例会の開会に当たりまして,県政運営についての基本的な考え方を明らかにいたしますとともに,令和7年度予算及び令和6年度補正予算等の概要について御説明申し上げます。
説明に入ります前に,先日,県警察の幹部職員が書類送検される事案が発生しました。一連の不祥事を受け,県警察において昨年8月に再発防止対策を策定し,性加害を含む非違事案の再発防止に向けた取組を進めてきた中,県民の信頼を更に損なうような事案が発生したことは甚だ遺憾であります。
本件の事実関係については,今後の捜査により明らかになると考えておりますが,県警察におかれては,これまでの取組の実効性について改めて検証した上で,徹底した再発防止対策に組織一丸となって取り組み,県民の信頼を一日も早く回復できるよう努めていただきたいと考えております。
[1 県政運営の基本方針]
県政運営の基本的な考え方であります。
現在,我が国は,本格的な人口減少や少子高齢化の進行,不安定な海外情勢による物価の高騰,グローバル化やデジタル化の進展,世界的な要請でもあるカーボンニュートラルの実現など大きな変革期の中にあり,これらへの様々な対応が求められております。
特に,コロナ禍を経て,出生数の減少が予想を上回る速度で進行するとともに,様々な分野で人手不足が顕在化しており,人口減少社会の中で,どのように地域の活力維持と発展を図っていくかが大きな課題であると考えております。
私としては,こうした状況に的確に対応しつつ,将来を見据え,魅力ある本県の素材「ポテンシャル」を最大限に生かしながら,地域に仕事や人の流れをつくり,住みやすい地域,将来にわたって活力ある社会を形成していくことが重要であると考えております。
まずは,県内経済の早期回復を図るとともに,人口減少社会の中で今後の鹿児島の発展の基盤をしっかりとつくっていく必要があります。
このため,基幹産業である農林水産業や観光関連産業の更なる振興に取り組むとともに,技術力の高い製造業や情報関連産業など新たな産業の創出にも取り組み,鹿児島の「稼ぐ力」の向上を図ってまいります。
こうした「稼ぐ力」の向上を図るためには,各産業を支える人材の確保・育成が不可欠であります。人手不足が深刻化する中,各産業分野における人材の確保・育成,労働生産性を高めるためのデジタル人材の確保,地域経済を支える貴重な人材としての外国人材の受入れのほか,移住・交流の促進等にも取り組んでまいります。
また,本県の将来を支える人材の確保・育成に向けて,国の施策の方向性も踏まえつつ,市町村とも連携して,本県の実情を踏まえた子ども・子育て支援施策の充実・強化を図り,結婚,妊娠・出産,子育ての希望が叶う社会の実現に取り組んでまいります。
このほか,防災対策の更なる充実・強化や,デジタル化・カーボンニュートラルへの対応,高齢者が健やかで生きがいを持てる社会の形成,奄美・離島の振興など,各般の施策を積極的に推進してまいります。
これらをはじめとした「かごしま未来創造ビジョン」に掲げた各般の施策に取り組むことにより,「誰もが安心して暮らし,活躍できる鹿児島」を目指してまいりたいと考えております。
私は,県民の声がしっかりと反映される県政にしたい,県民が主役の,県民の目線に立った行政を実現したい,各市町村の意見を聞きながら連携を進めていきたいということを申し上げてまいりました。
県民との対話を進め,政策決定の透明化を図り,市町村との連携強化に取り組むことなどにより,県民の皆様と一丸となって力強く県勢発展を推進してまいりたいと考えております。
今後とも,時代の変化に的確に対応しながら,「県民の皆様と一緒に鹿児島の今と未来をつくる」ということを基本として,「誠実に」,「着実に」県政の推進に全力を挙げて取り組んでまいります。
[2 予算編成の大綱]
次に,令和7年度の予算編成の大綱について申し上げます。
我が国経済は,一部に足踏みが残るものの,緩やかに回復しております。
先行きについては,雇用・所得環境が改善する下で,各種政策の効果もあって,緩やかな回復が続くことが期待されますが,欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響など,海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっております。また,物価上昇,米国の政策動向,中東地域をめぐる情勢,金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。
県内経済は,緩やかに回復しているところでありますが,足元では,物価上昇などの影響がみられます。
こうした中,国においては,令和7年度予算を令和6年度補正予算と一体として編成し,足元の物価高,賃金や調達価格の上昇に対応しつつ,デフレを脱却し,新たなステージとなる「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を実現することを目指して,物価上昇を上回る賃金上昇の普及・定着,地方創生2.0の起動,官民連携による投資の拡大,防災・減災及び国土強靱化,充実した少子化・こども政策の着実な実施などに取り組むこととしております。
県としては,令和7年度当初予算編成に当たり,引き続き,「稼ぐ力」の向上やそれらの産業を支える人材の確保・育成,子ども・子育て支援施策の充実・強化など,「かごしま未来創造ビジョン」に掲げた各般の施策を積極的に推進する予算として編成いたしました。
令和7年度は,現下の原油価格・物価高騰への対応を講じつつ,世界的なコロナ禍からの経済回復を踏まえ,更なる農林水産物の輸出拡大やインバウンドの促進など,「鹿児島の『宝』を世界へ」届ける施策に,特に力を入れて取り組んでまいります。
また,近年加速化する少子化や能登半島地震を踏まえ,「確かな安心,鹿児島」を目指して,子ども・子育て支援施策や防災対策の更なる充実・強化に取り組んでまいります。
令和7年度一般会計当初予算は,令和6年度当初予算に対し1.5パーセント増の8,527億34百万円となりました。
予算編成を通じて,行財政改革推進プロジェクトチームを中心として歳入・歳出両面にわたる徹底した行財政改革に取り組んだ結果,財源不足のない予算を編成することができました。
令和7年度末の県債残高見込みについては,臨時財政対策債等を除いた本県独自に発行する県債の残高ベースで比較すると,令和6年度末の1兆475億円から45億円減の1兆430億円と減少しております。
また,令和7年度末の財政調整に活用可能な基金残高は,令和6年度末の残高と同程度の251億円となり,250億円を下回らない水準を維持しております。これにより,行財政運営指針に掲げた今後の財政運営における3つの指標については,令和7年度当初予算編成時点において,全て達成しております。
国の「経済財政運営と改革の基本方針2024」においては,状況に応じ必要な検証を行っていくとされたものの,財政健全化の旗を下ろさず,これまでの財政健全化目標に取り組む旨が示され,今後,地方交付税等について厳しい調整が行われることも予想されます。
このような国の動向にも的確に対応しつつ,持続可能な行財政構造を構築するため,引き続き,歳入・歳出両面にわたる徹底した行財政改革に取り組んでまいります。
企業会計を除く特別会計の予算規模は4,109億56百万円となっております。企業会計は,病院事業特別会計で262億50百万円,工業用水道事業特別会計で6億2百万円となっております。
[3 主要施策の概要]
以下,主要施策の概要について申し上げます。
まずは,原油価格・物価高騰への対応であります。
不安定な海外情勢や円安の影響などから,足元では物価の高騰が続いており,県民生活への影響が生じております。
県としては,国の施策とも連携して,これまで物価高騰の影響を受けている生活者や事業者の負担軽減に努めてきております。令和6年度補正予算及び令和7年度当初予算においても,燃料油や飼料の価格高騰に対する生産者への支援,国の支援の対象外となっているLPガス利用者や特別高圧受電事業者への支援,公定価格で運営を行っている医療機関や社会福祉施設への支援,保育所や県立学校等の給食費等への支援による子育て世帯の経済的負担の軽減などに要する経費を計上しております。
また,危機に強い経済構造への転換を図るため,中小企業のDX化,製造業・サービス業のAI,IoT等の導入による自動化・省力化の取組に対する集中的な支援などに要する経費を計上しております。
次に,来年度の施策の大きな柱であります。
第一は,「『稼ぐ力』の向上」であります。
農林水産業をはじめ,本県の主要な産業においては,付加価値の向上が課題であると考えております。
鹿児島の基幹産業である農林水産業や観光関連産業,技術力の高い製造業等の「稼ぐ力」の向上に取り組み,経済を持続的に発展させることで,県民所得の向上を図ってまいりたいと考えております。
農林水産業の「稼ぐ力」を引き出すためには,販売量の増加や販売単価の向上,生産コストの低減,農林水産業を支える担い手の確保・育成に取り組む必要があります。
販売量の増加に向けては,生産施設等の整備による生産基盤の強化や輸出推進体制の構築による輸出拡大などに取り組んでまいります。
販売単価の向上に向けては,本県農林水産物の認知度を高め,ブランド力の向上を図るための首都圏や海外でのPRなどに取り組んでまいります。
生産コストの低減に向けては,作業の効率化・省力化を図るためのスマート機器の導入によるスマート農林水産業などに取り組んでまいります。
農業の振興については,生産基盤の強化に関して,集出荷施設等の共同利用施設の老朽化が進んでいることから,国の補正予算を活用し,新たに,共同利用施設の再編集約・合理化を支援してまいります。
農林水産物の輸出促進については,「鹿児島県農林水産物輸出促進ビジョン」における令和7年度の輸出目標額約500億円の実現に向けて,引き続き生産体制や販売力の強化に戦略的に取り組んでまいります。
具体的には,官民一体となった輸出推進体制「GFP鹿児島」のもと,輸出先国の規制・ロット等に対応した大規模輸出産地の構築,海外フェアの開催や商談会への出展など海外へのPR・販売促進活動,新たな輸出先国の規制への対応に向けた実証等に取り組んでまいります。
品目別では,海外での健康志向や日本食への関心の高まりなどから,近年需要が伸びている「かごしま茶」に特に力を入れることとし,輸出向けの新品種「せいめい」の産地化に向けた研修会や海外営業・PR活動支援等を実施することとしております。また,輸出量が増加しているEUでの販路拡大に向け,現地パートナー人材の確保・活用に向けて取り組んでまいります。
お茶については,国が昨日公表した令和6年産荒茶生産量において,本県が全国1位となりました。県としては,引き続き,抹茶・紅茶など多様なニーズに対応した生産・加工技術の支援,てん茶・抹茶加工施設の整備促進など,生産振興に取り組むとともに,「かごしま茶」の国内外での販路開拓への取組を支援してまいります。
県産農畜産物のブランド力向上に向けては,本県のオリジナル品種や高品質で希少性のある果物などを本県産品のブランド力向上のシンボル的産品として,高所得者層を対象としたプロモーションを行うこととしております。来年度は,市場動向や消費者の嗜好,産品のストーリー性などを踏まえ,産品の選定を行うとともに,産地づくり,ブランド化・PRの方針を取りまとめることとしております。併せて,市場動向の調査やテスト販売などのマーケティング調査を行ってまいります。
県産和牛については,鹿児島県が日本一の和牛の産地であることを全国的に浸透させ,「和牛といえば,鹿児島県産。」のイメージの定着を図るため,「和牛日本一鹿児島」をキャッチコピーとした統一ロゴマークを本年度作成しました。あわせて,観光客をはじめ県民の皆様に広くアピールするため,県産和牛を提供する飲食店等を「和牛日本一鹿児島応援店」として登録する取組を行っており,引き続き登録を推進してまいります。
来年度は,県産和牛のブランド価値の向上に向けて,首都圏の高所得者層をターゲットとした高級スーパー・レストラン等での更なるPRに取り組むこととしております。また,10月に,鹿児島黒牛を推奨銘柄牛として開催される第44回東京食肉市場まつりに,本県として初めて協賛し,首都圏の食肉事業者に対して,県産和牛の強みである品質と供給力をPRすることとしております。
海外向けについては,近年輸出量が伸びている台湾をはじめ米国,EUなどの重点国において,食品展示会・商談会へ出展するとともに,ロース・ヒレ以外の多様な部位の販路拡大に向けた専門家派遣による調理・カット技術の指導を行うなど,更なる輸出拡大に取り組んでまいります。
スマート農業の推進については,畑地かんがいやほ場の整備が進んでいる曽於地域をモデル地区として,これまで露地野菜を対象に実証事業を行ってきており,主な栽培工程におけるスマート農機の成果を確認できました。来年度は,この成果を活用し,県下主要産地の基幹作物等の特性に応じた実証を行い,スマート農業の普及・拡大を図ってまいります。
農業の担い手の確保・育成に向けては,本年10月に,本県で開催される「第27回全国農業担い手サミットinかごしま」について,相互研鑽と交流を通じて,農業者自らの経営改善や地域農業・農村の発展につながる大会となるよう,担い手組織や農業団体等と一体となって開催に向けた準備を進めております。
県としては,実行委員会を中心に,県内外の農業者や関係者に対する広報活動を行い,大会開催に向けた更なる機運の醸成を図ってまいります。
「かごしま食と農の県民条例」の見直しについては,各地域や有識者との意見交換会で出された意見等を踏まえ改正骨子(案)を作成し,昨年11月の有識者との意見交換会で意見を頂くとともに,先の第4回県議会定例会で御論議いただきました。その後,12月13日から1か月間,パブリックコメントを実施したところであり,これらを踏まえた改正条例(案)を今議会に提案しております。改正案では,「食料・農業・農村基本法」の改正法で新たに盛り込まれた施策を踏まえ,食料安全保障の確保や環境への負荷の低減,農畜産物の輸出促進などを新たに規定しており,今議会で御論議いただきたいと考えております。
林業の振興については,原木の安定供給体制の構築に向けて,引き続き,デジタル技術を活用した路網の計画・設計などの普及・定着に取り組んでまいります。また,来年度は,ICTを活用した高性能林業機械の普及に向けた実証・研修を行うこととしております。
県産材の利用拡大については,昨年12月に志布志市の製材工場が本県2例目となる機械等級区分構造用製材のJAS認証を取得しました。
今後とも,認証取得を積極的に進めるとともに,品質や性能の確かな「かごしまJAS材」の生産体制の整備や県内外への販路拡大などに取り組んでまいります。
林業の担い手確保・育成に向けては,新規就業希望者向けの1年間の長期研修を行う「かごしま林業大学校」を本年4月に開校することとしております。林業大学校においては,林業関係団体や鹿児島大学等と連携し,森林・林業に関する幅広い知識,林業機械操作などの木材生産技術に加え,13種類の資格取得や,実践力を高める就業体験などの研修を実施し,林業の基礎から最先端に至る幅広い知識と技術を兼ね備えた安全意識の高い即戦力となる人材を継続して育成してまいります。
水産業の振興については,生産量日本一を誇り,本県水産物輸出額の約8割を占める養殖ブリに関して,現在,養殖業者からのニーズが高い早期人工種苗の生産施設の整備に取り組んでおります。また,生産原価の低減,養殖経営の安定化に向けて,高成長で生残率が高い優良種苗の生産技術の開発を計画的に進めてまいります。
海外での日本食ブームを受けて需要が増加し,重要な輸出産品となっている鰹節については,EUでは独自基準の厳しい輸入規制が設けられており,現状では輸出できない状況となっております。このため,水産技術開発センターにおいて,この規制をクリアする製造技術の研究を進め,その技術が開発できたことから,今後のEUへの輸出を見据え,来年度,実用化に向けた県内の鰹節工場での実証を行うこととしております。
本県水産物の新たな販路として,多くの乗客が乗船し,質の高い食事が提供されるクルーズ船は有望な市場であると考えられます。クルーズ船の短期かつ大ロットの発注に対応するため,県内の漁協や加工業者,流通事業者等の連携による供給体制の構築に向けた実証事業に取り組んでまいります。
水産業の担い手の確保・育成に向けては,「かごしま漁業学校」における各種研修の実施や,新規就業者が地域に定着するためのフォローアップを行う「新米漁業者みまもり隊」の運営・活動への支援などに取り組んでまいります。
赤潮対策については,本年度,八代海で1億円を超える被害が発生したことから,被害の軽減を図るため,赤潮の早期感知と迅速な情報共有のためのモニタリング体制の構築を図るとともに,養殖係留施設や足し網等の整備に取り組んでまいります。
新型コロナウイルス感染症の影響で大きく落ち込んだ旅行需要は,経済社会活動が活発化する中で徐々に回復しつつあります。
コロナ禍後の経済回復を軌道に乗せ,観光の「稼ぐ力」の向上を図るため,本年度策定する観光振興基本方針に基づき,国内外への戦略的な誘客を展開することにより,本県を訪れる観光客を増やすとともに,魅力ある癒やしの観光地形成に取り組み,観光消費額の増加を図ってまいります。
具体的には,データ等に基づいてターゲットを設定し,インターネットやSNS等を活用して,豊かな自然や多彩な食,個性ある歴史・文化など,本県が有する多彩な「宝物」の魅力を効果的に届けるため,デジタルプロモーションの取組を展開いたします。
国内誘客においては,人口が多いなど観光客の更なる伸びが期待できる関東又は関西在住の,60代以上又は20代から30代をターゲットに設定した上で,それぞれの世代で視聴機会の多いSNS等において,各ターゲットの興味・関心に対応したコンテンツの短編動画を広告として配信し,旅行予約サイトや県観光サイトに案内されるようにすることで,誘客につなげる取組を行ってまいります。
本年4月から10月にかけて開催される大阪・関西万博は,国内外から多くの来場が見込まれ,本県の魅力を広く発信する好機であることから,9月に万博会場の催事施設において,九州7県で合同出展し,本県の世界遺産,食文化,伝統的工芸品等の魅力を発信することとしております。
海外誘客については,令和4年10月の国の水際措置の緩和以降,我が国を訪問する外国人観光客は大幅に増加している一方,本県の外国人宿泊者数は,コロナ禍前の水準には戻っていない状況です。
鹿児島空港国際線については,コロナ禍前に就航していた4路線が全て再開されましたが,便数は6割程度にとどまっていることから,空港受入体制の確保に取り組みつつ,今後の復便や新規就航等を見据え,直行便4市場対策に取り組むとともに,中長期的な視点で,今後の有望な市場である東南アジアや欧米豪の戦略的市場対策に取り組んでまいります。
プロモーションの手法については,国内と同様,SNS等を活用したデジタルプロモーションを展開することとし,国毎に,使用率の高いSNSやターゲットとする年代等を設定した上で,各ターゲットが好むコンテンツを盛り込んだ短編動画を発信するとともに,各市場において利用の多い旅行予約サイトや県観光サイトに案内されるようにし,誘客を促進することとしております。
クルーズ船については,寄港回数は順調な推移となっておりますが,寄港地観光は鹿児島市内が中心であり,経済効果を県内各地に波及させることが課題となっております。このため,前・後泊が期待できる鹿児島発着クルーズへの支援を行うとともに,地域の観光地等のツアーの実施に協力的な船や規模の小さい港にも寄港可能な小型船などの誘致を重点的に行います。また,船舶を活用した大隅方面への寄港地観光や新幹線を活用した北薩方面への寄港地観光など,経済効果の広域化が期待される新たなクルーズ船客向けのツアー催行に取り組む事業者に対し支援を行ってまいります。
観光の「稼ぐ力」の向上のためには,多様化する旅行ニーズに対応しながら,地域資源の活用により消費単価を上げる観光地づくりが必要です。
その中核的な役割を担う地域のDMO等の体制強化を図るため,観光マーケティングに必要な人流データを用いた分析手法等に関する研修会や,専門家派遣等による伴走支援などを実施してまいります。
企業の「稼ぐ力」の向上に向けては,生産性と付加価値の向上,産業の集積による産業競争力の強化に取り組むとともに,将来を担う新たな産業の創出,県産品の国内外マーケットへの戦略的な展開などに取り組んでまいります。
企業の生産性向上に向けては,現下の物価高騰や人手不足の状況を踏まえ,中小企業におけるDX化,製造業・サービス業におけるAI,IoT等の導入による自動化・省力化の取組に対し,引き続き大規模かつ集中的な支援を実施してまいります。
企業立地の推進については,市町村等と緊密に連携を図りながら,企業誘致に引き続き積極的に取り組むとともに,中長期的には,新たな産業用地の確保に向けた取組を進めてまいります。本年度実施している適地調査等の結果を踏まえ,来年度,適地となる可能性の高いエリアについて,ボーリング調査等を実施し,開発候補地の選定を進めてまいります。
半導体関連産業は,多種多様な原材料や製造装置が必要であり,関連投資の増加やそれに伴う雇用増,賃金上昇など,地域経済への波及効果が極めて高い産業分野です。今月9日から11日にかけて,九州地域戦略会議の台湾訪問団の一員として台湾を訪問し,新竹サイエンスパーク等において,世界最先端の半導体関連産業の関係者と意見交換を行いました。半導体関連産業がもたらす経済効果を実感し,改めて工業用地の確保や人材育成の必要性などを認識しました。
今後,域外から本県への半導体関連の投資の呼び込みや地場の半導体関連企業の投資の活性化を図るため,産学官が連携しながら,半導体関連産業の人材確保・育成や半導体関連のサプライチェーンへの県内企業の参入促進などに取り組んでまいります。
スタートアップの創出・育成に向けては,各段階に応じた集中的かつ継続的な伴走支援を引き続き実施するとともに,産学官金の各機関が行っているスタートアップ支援施策を支援対象や内容に応じて整理した上で,これらの機関との連携強化を図るための場を設けます。
また,本県出身の県外起業家が中心となり,地元起業家を支援する取組も広がっており,これらの取組と連携し,起業家同士の交流を図ることを目的としたイベントを定期的に開催することとしております。
今後,市場拡大が期待できる宇宙関連産業については,これまで実施してきた産学官による研究会や人材育成セミナーの開催,県内企業の試験研究・実証事業に対する支援等に加え,専門家を活用し,参入に向けた課題整理や取組方針の策定,宇宙関連企業とのマッチングなど,段階に応じた県内企業への支援を行ってまいります。また,宇宙関連企業と参入を目指す企業との交流によるビジネスマッチングの機会を創出するため,九州宇宙ビジネスキャラバンを本県で開催することとしております。
本格焼酎については,昨年12月に伝統的酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録され,本県の本格焼酎についても,その製造技術や焼酎文化が世界的に評価されました。この登録を生かして,本格焼酎の更なる認知度向上と輸出拡大を図るためには,世界的に評価された価値を,海外で活動する酒類バイヤー等に理解してもらい,消費者等に訴求する情報発信や販売促進を行ってもらうことが必要です。このため,これらの酒類事業者に対し,鹿児島大学での焼酎学の講義や蔵元での製造体験,薩摩焼の酒器等を用いた食事等を通じて,本格焼酎の製造技術や焼酎文化を深く認知してもらう取組を新たに実施します。加えて,登録に至った焼酎や焼酎文化の価値を伝える多言語動画を作成し,海外でのトップセールスやインバウンド向けのPR等様々な機会で発信していきます。
第二は,「地域産業の振興を支える人材の確保・育成」,「移住・交流の促進」であります。
少子高齢化や生産年齢人口の減少に加え,進学や就職に際して,若年層が県外に流出し,県内産業の振興を支える人材の不足が大きな課題となっております。
このような状況を踏まえ,各産業分野における人材の確保・育成に取り組みつつ,若年者等の県内就職の促進,本県への移住・交流の促進のほか,地域経済を支える貴重な人材としての外国人材の受入れなどに取り組んでまいります。
若年者の県内就職の促進については,引き続き合同企業説明会の開催や県外大学生等を対象とした企業見学ツアー,県の公式LINEアカウント「もどかご!」による鹿児島で働き・暮らす魅力の発信などに取り組むほか,新たに,県外在住の大学生等が,県内で就職活動を行う際に要する交通費等を支援することとしております。
移住・交流の促進については,これまで,東京のふるさと回帰支援センターの相談員を増員し,相談体制の充実を図るとともに,全国的なイベントや各種セミナー等において情報発信・相談対応を行うなど,各種の取組を行っております。こうした取組を通じて,本県への移住者は平成30年度の1,343人から令和5年度は2,578人となるなど増加してきております。
来年度は,新たに,県外に暮らす本県出身の子育て世代等をターゲットとして,本県の子育て環境の良さや子育て支援策などの情報を発信することで,本県への更なる移住促進に取り組むこととしております。
外国人材の確保については,引き続きベトナムとの人的・経済的交流を促進するとともに,今後の有望な送り出し国であるフィリピンやインドネシア等との関係構築を図ってまいります。
第三は,「結婚,妊娠・出産,子育ての希望がかなう社会の実現」であります。
我が国では,出生数の減少が予想を上回る速度で進行し,人口減少に歯止めがかからない中,本県の将来を支える人材の確保・育成に向けて,国の施策の方向性も踏まえつつ,本県の実情に応じた子ども・子育て支援施策の充実・強化を図る必要があります。
このため,結婚,妊娠・出産,子育てのライフステージごとの課題に対応した総合的な支援策「かごしま子ども・子育て支援パッケージ」に盛り込んだ各施策を着実に推進してまいります。
妊娠・出産期においては,産後の母子に対して心身のケアや育児のサポート等を行う産後ケアについて,支援を必要とする全ての方が利用できるよう,引き続き,利用者が負担する利用料を無償化する市町村への支援を行うこととしております。また,これまで実施してきた遠方の分娩取扱施設で出産する場合の交通費及び宿泊費支援に加えて,遠方の医療機関等で妊婦健診を受診する際の交通費について,新たに支援を行うこととしております。
幼児教育・保育の充実に向けては,潜在保育士と保育所等とのマッチングを促進するため,県保育士・保育所支援センターを新たに設置するとともに,保育士修学資金貸付制度において貸付人数等を拡充し,保育人材の確保に向けた取組を強化してまいります。また,地域の幼児教育の拠点となる幼児教育センターを新たに設置し,幼児教育アドバイザーによる公私・施設類型の垣根を超えた施設訪問や園内研修等を通じた助言などを行い,幼児教育・保育の質の向上を図ってまいります。
子ども医療費助成制度については,未就学児を対象に,現物給付方式を課税世帯にも拡げることとし,新たな制度については,本年4月から開始することとしております。新制度の円滑な開始に向けて,制度内容や医療機関の適正受診に係る周知・広報を行ってまいります。
なお,県の制度拡充等を踏まえ,市町村においても独自制度のあり方を検討しております。課税世帯に対する現物給付化については,全ての市町村において,未就学児の自己負担をゼロにするとともに,42市町村が中学生まで,そのうち,37市町村が高校生までを対象とし,自己負担なしとする拡充を行う予定としております。
また,離島における出産や子育ての経済的負担の軽減を図る観点から,島内で分娩できない離島の妊婦が妊婦健診・出産する際や,離島の子どもがやむを得ず島外の医療機関等を受診する際の交通費・宿泊費について,引き続き支援してまいります。
子どもの居場所づくりについては,関係機関による協議会を設置し,子どもの居場所づくりに関する情報交換や意見交換等を行うとともに,本年度実施した実態調査の結果等も踏まえ,フリースクール等に関する支援の在り方を検討するとともに,着手可能な支援は可能な限り早期に実施してまいります。
さらに,不登校・いじめなどの未然防止や早期発見・早期解決を図るため,児童生徒への心理的な支援を行うスクールカウンセラーの派遣回数を本年度に引き続き拡充することとしております。
県としては,結婚,妊娠・出産,子育ての希望が実現できる社会づくりや,全ての子ども・若者が幸せを感じながら生活を送ることができる社会の実現を目指して,市町村等とも連携しながら,これらの子ども・子育て関連施策を着実に推進してまいります。
第四は,「能登半島地震を踏まえた防災対策の更なる充実・強化」であります。
昨年1月に発生した能登半島地震では,道路の寸断,建物の損壊,電気・水道・通信等のライフラインの損傷など甚大な被害が発生し,集落の孤立,避難の長期化など,様々な厳しい状況が生じました。半島や離島を有する本県の今後の防災対策に,能登半島地震の知見を反映させていくことは大変重要であります。
国においては,避難所運営,物資調達・輸送などの検証を行い,その検証・教訓を踏まえた防災基本計画の修正を行い,また,能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方についての報告書が昨年11月に取りまとめられました。
本県では,国の対応等を踏まえ,先般,県地域防災計画について見直しを行いました。今後,同計画も踏まえ,防災対策の更なる充実・強化に努めてまいります。
能登半島地震では,多くの孤立化集落が発生し,早期の道路啓開やライフラインの確保,食料・医薬品等の備蓄・運搬など,多くの課題が顕在化しました。これを踏まえ,本県では,新たに市町村等との孤立化集落対策に係るブロック別検討会議を開催し,各課題への対応の具体化に向けた意見交換等を行うこととしており,県の孤立化集落対策マニュアルを踏まえた市町村の地域防災計画等の見直しや,孤立化のおそれのある集落毎の地区防災計画の作成など,孤立化集落対策が促進されるよう取り組んでまいります。
災害時における備蓄物資については,昨年12月に,国が指針を改定し,市町村においては避難所や物資拠点に必要な備品を確保するとともに,都道府県においては市町村の備蓄状況を踏まえた広域的な備蓄を確保することなどが示されました。この指針の内容を踏まえ,国,県,市町村,県と協定を締結している輸送事業者や小売事業者等による検討会議を開催し,備蓄目標の考え方や県と市町村との役割分担,保管場所,輸送手段など,災害用物資・機材等の備蓄の在り方について検討することとしております。
能登半島地震では,インフラ・ライフラインの復旧に時間を要したこと等に伴う影響として,生活用水の確保が困難となり,トイレ・入浴に問題を抱えた避難所が多くありました。これを踏まえ,本県では,避難生活における良好なトイレ環境や入浴機会が確保されるよう,県がモデル的にトイレカーや水循環型シャワー等を整備し,訓練やイベントへの展示を行うことにより,市町村における整備を促進するための普及啓発を行うほか,大規模災害の発生時に活用することとしております。
能登半島は,住宅の耐震化率が低く,今回の地震で多数の住宅が倒壊しました。本県も住宅の耐震化率が全国と比べて低く,耐震化の取組を促進する必要があることから,市町村が国の補助制度を活用して木造住宅の耐震改修工事費の一部を助成する場合の上乗せ補助を新たに行うこととしております。
また,大規模災害時,被災者の方に対しては,国の制度により被災程度に応じ最大300万円の被災者支援がなされています。しかしながら,同制度の適用条件は,10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村等となっていることから,対象外となる市町村の場合,県独自の制度により一律20万円の支援はあるものの,国の制度と比べると,支援内容に大きな差が生じております。このため,県の制度を国の制度と同等程度になるよう見直し,これまでの見舞金的な制度から再建支援を目的とした制度に改めることとしております。
第五は,「デジタルテクノロジーを活用した県民の暮らしの質の向上」であります。
暮らしと産業のデジタル化については,介護・障害福祉分野へのロボット等の導入支援や,農林水産分野におけるスマート化の推進,中小企業のデジタル技術導入への伴走支援などに取り組むこととしております。
行政のデジタル化については,デジタル技術の活用による業務改革や働き方改革をより一層推進するため,職員が自ら業務システムを開発・運用できるツールを新たに導入するとともに,県民の利便性向上を図るため,行政手続のオンライン化を進めてまいります。
また,市町村におけるデジタル化の取組を支援するため,引き続き,伴走支援を行うデジタル人材を派遣してまいります。
デジタル人材の確保・育成については,高度デジタル外国人材を確保するモデル構築に取り組むほか,県内企業のDXの取組を伴走支援するIT企業の高度デジタル人材を育成する研修や,ITエンジニアを目指す方を対象としたプログラミング研修などに取り組んでまいります。
第六は,「脱炭素社会の実現と豊かな自然との共生」であります。
地球温暖化は,人類の将来に関わる最も重要な環境問題であり,県としても,2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロとすることを目指し,「鹿児島県地球温暖化対策実行計画」等に基づき取組を進めております。同計画については,国の地球温暖化対策計画の改定等を踏まえ,2035年度及び2040年度の温室効果ガス排出削減目標を設定するとともに,その達成に向けた施策などの見直しを来年度行うこととしております。
また,地球温暖化の現状,温室効果ガスの排出削減について,県民や事業者の理解を深め,気運の醸成及び行動変容の促進を図るため,引き続き,環境学習の場における普及啓発等を行うほか,県内のエネルギー起源の二酸化炭素排出量の削減を図るため,電気自動車や充電設備,省エネ設備等の導入支援等を行うこととしております。
さらに,県有施設における照明のLED化や太陽光発電設備の設置等を行うこととしております。
再生可能エネルギーについては,国の第7次エネルギー基本計画等も踏まえながら,県の「再生可能エネルギー導入ビジョン2023」に基づき,マイクログリッド構築などの先進的な取組に対する支援などを行うことにより,再エネの地産地消の取組を推進してまいります。
洋上風力発電については,来月,第7回の研究会を開催する予定であり,引き続き,関係市町や利害関係者等の意見を丁寧に聞きながら,検討を進めてまいります。
温室効果ガス排出削減と経済成長の両立を図るGXについては,引き続き,畜産業やインフラ・建設分野におけるGXに取り組んでまいります。
畜産業におけるGXについては,牛から排出される温室効果ガスの削減や生産コストの低減,生産性向上を図るため,畜産事業者や関係団体等と連携し,飼料用アミノ酸の普及やJクレジットの活用促進などに取り組んでまいります。この取組が,消費者と協働で社会価値を向上させる優良事例として,自治体で初めて消費者庁長官表彰を受賞しました。昨日の表彰式には,私も出席し「和牛日本一鹿児島」や,本県が全国に先駆けて畜産業におけるGXに取り組んでいることをPRしました。
また,インフラ・建設分野におけるGXについては,シラス由来の火山ガラス微粉末(VGP)の社会実装を図るため,低炭素型シラスコンクリートを利用したモデル工事を実施するとともに,東京大学や鹿児島大学,大手建材メーカー等と連携し長寿命化に関する研究を行うなど,VGPの量産化に向けて取り組んでまいります。
このほか,新たなGXプロジェクトを創出するため,可能性のある取組の掘り起こしやGXに取り組むモデル企業への支援を行ってまいります。
第七は,「多様で魅力ある奄美・離島の振興」であります。
本県の離島は,各島の特色ある独特の自然,文化,伝統,多様なコミュニティなど,多様性を有しており,まさに鹿児島の宝であると考えております。一方で,外海離島が多く,台風常襲地帯であるという厳しい自然条件の下,医療,物価,物流など多くの面で課題もあると認識しております。
離島の多様で豊富な地域資源を活用するとともに,生活環境,交通基盤,産業基盤などの社会資本の整備と更なる産業振興を図ってまいります。
奄美群島の振興については,奄美群島振興開発計画に基づき,移住・定住の促進,自然環境の保全と利用の両立,産業の振興による稼ぐ力の向上などに着実に取り組んでまいります。航路・航空路の運賃軽減や農林水産物等の輸送コスト支援などの取組を引き続き推進し,奄美群島が有する条件不利性の改善や沖縄との連携を促進してまいります。
離島の振興については,特定有人国境離島地域における航路・航空路運賃の低廉化や輸送コスト支援などを引き続き実施するとともに,自然条件等が特に厳しい離島地域における市町村の取組を特定離島ふるさとおこし推進事業により支援するなど,離島地域の活性化に着実に取り組んでまいります。
このほかの重要施策についても着実に取り組んでまいりたいと考えております。
「知事とのふれあい対話」については,先月25日に鹿屋市・垂水市の県民の皆様と,農畜・水産・林業の「稼ぐ力」の向上をテーマとして,牛肉の消費拡大のための取組や林業の人材確保対策等について,意見交換を行いました。
また,今月8日には伊佐市・湧水町の県民の皆様と,観光の「稼ぐ力」の向上をテーマとして,滞在型観光の推進や観光情報の発信の強化等について,意見交換を行いました。
今後,全地域において順次開催し,県民の皆様の声を県政に反映するとともに,透明で開かれた県政運営を行ってまいります。
地域振興局・支庁の庁舎については,南薩地域振興局庁舎の再整備について,昨年10月に取りまとめた南薩地域振興局新庁舎整備基本計画に基づき,令和10年度はじめの供用開始を目指し,現在,基本設計を実施しております。
北薩地域振興局及び大島支庁については,令和4年度から5年度にかけて実施した劣化状況調査の結果により,令和14年度末までの建替えが望ましいとされたところであり,南薩地域振興局庁舎の再整備に6年程度の期間を要することを踏まえると,令和9年度までには再整備に向けた検討を開始する必要があります。また,今後の県財政への影響の観点から,再整備に係る財政負担の平準化も考慮する必要があります。
このため,建設年次の古い大島支庁庁舎の再整備に向けて,令和7年度から取組を開始し,令和9年度から北薩地域振興局庁舎の取組を開始したいと考えており,今後の再整備の検討に当たっては,関係市町村等の意見をできる限り丁寧にお聞きしながら,着実かつ計画的に実施してまいります。なお,姶良・伊佐地域振興局庁舎の再整備については,劣化状況調査結果等を踏まえ,令和19年度末までの建替えに向け,令和14年度の取組開始を目途としつつ,今後の再整備の進捗等を踏まえ,改めてその時期を精査したいと考えております。
公文書の管理については,公文書等の管理に関する条例に基づき,特定歴史公文書として保存すべき公文書の選別作業を進めております。
特定歴史公文書については,作業の進捗に応じて目録を作成し,順次公開して県民の皆様の利用に供することとしており,先月,最初の目録を公開しました。また,特定歴史公文書の利用等を積極的に推進する観点から,公文書館の設置に向けた検討を進めることとしております。
本年度,公文書館での収集・保存に関することなど,本県の公文書館に求められる機能について,公文書管理委員会から意見聴取を行っており,来年度は,頂いた意見を踏まえながら,県において公文書館の設置に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。
鹿児島港本港区エリア一帯の利活用については,今月12日に第4回鹿児島港本港区エリアまちづくり懇談会を開催し,民間活力の導入やクルーズ船の受入環境整備に向けた取組などについて意見交換を行いました。出席者からは,「ウォーターフロントパークは,天文館や中央駅との違いを考えて,緑と海を楽しめる癒やしの空間とすべき」,「民間のみで施設を整備するのは難しいので,公共との費用分担などについて話し合っていく必要がある」といった意見が出されました。
県としては,県議会での御論議や鹿児島港本港区エリアまちづくり懇談会における意見等も踏まえ,エリアコンセプトプランの具体化に向けた取組を着実に進めてまいります。
同エリアのうち,住吉町15番街区の利活用については,事業者の公募に向けて,公募要領案の作成や提案内容の評価等を行うため,「住吉町15番街区利活用事業提案評価委員会」を設置しました。先月9日と今月4日には同委員会を開催し,専門的な立場から様々な意見を伺いました。
これらの意見も踏まえ,住吉町15番街区については,将来にわたり県の意図に沿った利活用を担保する観点から,その利活用に当たっては,定期借地権を設定して貸し付けることとし,今回,同街区を利活用する際の条件や提案内容を評価する際の基準等を内容とする公募要領案を取りまとめました。
県としては,今議会において,公募要領案の内容について御論議を賜り,県議会での御意見を踏まえ,速やかに公募要領を策定し,公募を開始したいと考えております。
スポーツ・コンベンションセンターについては,これまで,県議会の皆様方に熱心に御論議いただき,予算を議決いただきましたが,その後,建設コストの急騰など大きな状況変化の結果,入札が不調になり,整備の着手に至らなかったことは,誠に遺憾であります。
同センターについては,昨年の第4回県議会定例会で様々な御意見を頂いたことも踏まえ,事業費については,令和7年度当初予算には計上せず,今議会で丁寧に御説明し,御論議を頂いた上で,整備運営手法や予算の計上時期等を判断したいと考えております。
入札不調後の様々な検討を踏まえた現時点の県としての考え方を申し上げます。
まず,施設の規模については,現体育館が整備された当時と比べ,屋内競技の競技人口や大会参加チーム数の増加,各種競技の大会基準の変更などにより,県大会や全国大会等の開催には,現体育館より大きな規模の施設が必要となっております。
本県においては,このような大会開催の基準を満たす規模の施設がなく,複数会場での分散開催や長時間の大会運営を余儀なくされています。
このため,特に,離島や遠方から参加した選手たちは,交通手段の制約などから,例年,表彰式の途中退席や延泊を強いられるケースがあるなど,大きな負担になっております。
二つの半島,多くの離島を有するという地理的な特性がある本県において,県内各地の全ての県民の皆様に,できるだけ不便なく,安心,安全,快適に御利用いただくとともに,様々な大会の開催が可能な規模の県立体育館・武道館を新たに整備することが,県の責務であると考えております。
このようなことから,競技フロアについては,各種競技の大会基準等に基づき,必要最小限の規模として,バスケットボールコートでメインアリーナ4面,サブアリーナ2面の計6面が必要と考えております。
なお,施設の規模について,人口が減少する中で大規模なものは必要ないとの議論がありますが,各種競技の大会基準に基づく必要最小限のものであり,スポーツ・コンベンションセンターでの開催が見込まれる全国大会,九州大会,県大会には,各地区の予選を勝ち抜いたチームや個人が一定数参加することから,参加するチームや選手の数は,人口減少に比例して一概に減少するものではないと考えております。
ちなみに,平成20年から令和5年までの15年間で,県人口は10.0パーセント減少している一方で,現体育館の利用者数は2.3パーセント増加しています。
スポーツ・コンベンションセンターの整備予定地をドルフィンポート跡地としたことを踏まえ,体育館としての利用にとどまらず,いかに県内外から来場していただけるか,また,そのことで,いかに賑わいを創出し,中心市街地との回遊性を高め,地域活性化につなげるかという観点も大変重要です。
このため,体育館としての施設の仕様を特段変更することなく,スポーツ利用のない日を,これまで本県で開催できなかった大規模なコンサートや展示会,見本市などで有効活用することとし,また,観光客等にも開かれた施設とすることで,新たな賑わいの創出や中心市街地の活性化にもつなげていきたいと考えております。
こうした観点を踏まえつつ,競技フロアの面数を維持する一方で,できる限り建設コストの削減を図るべきではないかとの観点から,あえてメインアリーナの固定席の削減等を検討しました。
観客席数の削減が1千席の場合,基本構想でお示しした来場者の行動に伴う経済波及効果が4億円減少することになりますが,毎年47億円の経済波及効果が見込まれます。
一定の経済波及効果を維持しつつ,初期コストを抑えるという観点から,メインアリーナの固定席1千席の削減等もやむを得ないのではないかと考えました。
次に,建設コストの削減に加え,新たな財源の確保を検討しました。
現時点で想定されるものとして,まず,農業試験場跡地の売却益や年度末に確定する特別交付税等の上振れ分を活用することにより,現在約100億円の県有施設整備積立基金を,令和11年度には150億円まで積み増すことができると考えております。
また,現体育館・武道館の敷地の売却益を20億円と見込んでおります。
これらの結果,新たな財源として,計70億円を見込んでおります。
固定席の削減も含め,様々なコスト削減を検討した上で,民間事業者が公表している指標を用いると,PFI方式で実施する場合の本年3月時点での事業費は,施設整備費407億円,15年間の維持管理・運営費36億円,金利等41億円の計484億円と推計されました。
国の補助金や県有施設整備積立基金等を活用すると,今後15年間で支払う県の一般財源の負担総額は311億円となり,毎年度の一般財源負担額は20億円と見込まれます。
県においては,「稼ぐ力」の向上や子ども・子育て施策をはじめ,県政の浮揚発展に必要な様々な施策に,引き続き,積極的に取り組んでいかなければなりません。
県財政を預かる立場として,最も肝要なことは,スポーツ・コンベンションセンターの整備に当たり,他の事業に可能な限り影響を与えないようにするということであります。
他の事業への影響を考えるに当たっては,毎年度の一般財源の負担額を見て判断する必要があると考えております。
これまでPFI方式での整備を検討してきましたが,PFI方式は,建設コストの上昇や金利の上昇など,今般の状況を踏まえると,そのメリットが薄れています。
また,県債を活用して必要な資金を県が調達し,30年で償還していく従来型手法は,PFI方式と比較して単年度の一般財源負担が大きく軽減されることから,整備運営手法を従来型手法に見直したいと考えております。
従来型手法の事業費を推計すると,設計費,建設費,15年間の維持管理・運営費,30年間の起債金利を合わせて,PFI方式での事業費より4億円増えると見込まれますが,新たに,国の交付金15億円も活用可能と見込まれるため,県の一般財源の負担総額は300億円となり,県債の償還期間が30年間であることから,毎年度の一般財源負担額は10億円と見込まれます。
加えて,後年度に地方交付税措置が受けられるなどの有利な地方債の活用や,新たな財源確保に努めるなど,更なる一般財源負担の軽減に努めてまいります。
本県においては,これまで県庁舎や県民交流センター,農業開発総合センターなどの大規模な建物を整備する際には,県債を活用し負担の平準化を図ってきました。これらの県債の償還を進めつつ,県債を財源とする普通建設事業費の水準等を適切に管理してきた結果,平成16年度に最大1,704億円であった公債費は令和7年度当初予算において1,051億円となっております。
これらの大規模な建物整備に係る県債の償還は近く完了する見込みです。県庁舎は令和8年度,県民交流センターは令和14年度,農業開発総合センターは令和17年度で償還を完了することを予定しており,スポーツ・コンベンションセンターに係る県債の償還が始まる頃に,これらの施設に係る公債費計16億円が減少する見込みです。
今後,改修や更新を要する県有施設等も見込まれますが,メリハリをつけた社会資本整備を行うことなどにより,スポーツ・コンベンションセンターの整備に伴う約10億円の公債費に対応することは可能であると考えております。
仮に,今後,事業費が増嵩し,毎年度の一般財源の負担が数億円程度増えたとしても,1,000億円余りの規模の毎年度の公債費の中で適切に管理し,持続的で安定的な財政運営を行ってまいります。
60数年前に県民のために巨額の私財を投じて,理想的な体育館を建設しようとされた故俣野健輔氏の志を受け継ぎ,これから先10年,30年,50年後を見据え,現在の体育館と同じように,将来の県民生活の向上に大きな役割を果たせるよう,県民の健康増進とスポーツの振興等に加え,インバウンドを含めた観光振興や賑わいの創出,中心市街地の活性化,自然災害が頻発する中での災害対応機能の分散・強化,障がい者や高齢者も安全で利用しやすいユニバーサルデザインの実現,カーボンニュートラルに向けたゼブレディの導入,桜島の景観を望む本港区エリアにふさわしいデザインを備えた鹿児島のシンボル的施設といった,新たな価値も備えた施設として,しっかりとスポーツ・コンベンションセンターの整備を推進していく覚悟であります。
スポーツ・コンベンションセンターについては,必要な競技フロアの面数を確保しつつ,固定席の1千席削減などのコスト削減を図るとともに,整備運営手法を変更することで,単年度の一般財源の負担軽減が図られ,持続的で安定的な財政運営を行うことが可能と考えております。
今議会において,そのことについて御理解を頂けましたら,次の段階として,設計費用を予算計上したいと考えております。
鹿児島中央駅西口地区の県工業試験場跡地の利活用については,今月4日に第3回検討委員会を開催しました。
同委員会においては,これまで委員から頂いた提案を踏まえ行った,経済団体や民間事業者等の意見聴取の結果などの説明を行った上で,同跡地に導入が望まれる機能,土地の取扱いや整備運営手法等について議論していただきました。同委員会では,バス駐車スペース及び緑地などの多目的オープンスペースを確保すること,周辺道路の交通の混雑状況を勘案して利活用の検討を進めること,土地の取扱いについては民間事業者への売却は行わないこと,整備運営手法については貸付などによる民間活力の活用を含めて検討することといった委員間の共通認識が得られました。
県としては,同委員会において,引き続き同跡地の利活用の方向性について議論し,取りまとめていただくこととしており,同委員会の議論や取りまとめ結果,県議会での御論議を踏まえ,県民の皆様の御意見もお伺いしながら,丁寧に検討を進めてまいります。
馬毛島における自衛隊施設の整備等については,関係機関・団体からの情報収集や,今月5日に開催した県と種子島1市2町による連絡会等において,地元の懸念事項等をお聞きしたところであり,国に対して,引き続き必要な対応を行うよう申し入れを行いました。
本年4月以降には,工事関係者数がピークを迎える見通しとなっており,住民生活や地元経済への影響が懸念されます。
県としては,今後とも,地元市町と緊密に連携を図りながら,住民の安心・安全が確保され,また,環境保全措置が適切に講じられるよう,国に対応を求めるなど,しっかりと取り組んでまいります。
高規格道路については,東九州自動車道や南九州西回り自動車道,北薩横断道路などの整備推進に努めており,このうち,都城志布志道路の志布志インターから志布志港間を来月23日に供用開始することとしております。これにより,都城志布志道路の全線約44キロメートルが開通することとなります。また,大隅縦貫道については,来年度中の供用に向け,吾平道路の整備を進めております。
今後とも,高規格道路の早期供用に向け,国と一体となって,整備に努めてまいります。
屋久島空港については,滑走路の延長に向けて,現在,現地測量を進めております。また,滑走路の延長やエプロンの拡張などに必要な航空法に基づく空港施設の変更許可手続中であり,今後,公聴会を経て,変更許可を得るとともに,工事着手に向けた実施設計や用地測量,用地買収などを計画的に進めることとしております。今後とも,地元屋久島町と一体となって,早期完成に向けて取り組んでまいります。
鹿児島港については,平成5年の港湾計画の改訂以降,社会経済情勢が変化していることを踏まえ,計画全体の見直しの検討を進めております。一方,増加する国際クルーズ船寄港に対応した受入環境整備や,本港区の更なる賑わいの創出及びそれに伴う臨港道路の渋滞対策など喫緊の課題については,早期に対応する必要があると考えております。
県としては,今後,県議会での御論議や,地方港湾審議会を経て,本年度中に港湾計画の軽易な変更を行いたいと考えております。
川内港については,地域の産業の競争力強化を支える効率的かつ経済的な貨物の輸出入の実現のため,国際物流ターミナル整備事業により,新たな岸壁やふ頭用地の整備を進めております。
今後とも,国と連携を図りながら,まずは,令和7年度末の暫定供用に向け,船舶の大型化に対応できるよう着実に整備を進めてまいります。
また,ガントリークレーンについては,室蘭港からのクレーンの移設に向けて,所有者である室蘭市との協議を進めており,早期設置に向けて取り組んでまいります。
志布志港については,学識経験者や港湾・地元関係者,行政機関等から構成される検討委員会を設置し,おおむね20年から30年後の志布志港の将来を展望する「志布志港長期構想」の検討を進めております。
同構想は,本年度内の策定を予定しており,今後,長期構想を踏まえて,港湾計画の見直しについて検討してまいります。
鹿児島空港国際線については,昨年12月23日から香港航空による香港線が週3便から週4便に増便されました。また,将来的な定期便の就航を見据えて,ベトナム航空による鹿児島-ハノイ間の2WAYチャーターフライトが12月30日から先月3日の日程で実施され,来月26日から30日にも,実施される予定となっております。鹿児島-プサン間においても,エアプサンにより,先月24日から今月2日の日程でチャーターフライトが実施されました。また,先月の台湾屏東県の訪問に合わせて,チャイナエアライン本社を訪問し,昨年5月からの台北線の運航再開について謝意を伝えるととともに,増便を要請したところ,現行の週2便が来月30日以降,週3便に増便されることとなりました。引き続き,鹿児島空港国際線の拡充及び安定的運航を図るための航空会社への運航支援を行ってまいります。
他方で,国際定期便の拡充に当たっては,グランドハンドリングなどの受入体制の確保が引き続き課題となっていることから,職員の採用支援や航空会社に対する応援職員の派遣要請などに引き続き取り組むとともに,今後の増便等も見据え,新規事業者の参入を促すため,参入に当たっての課題である安定的な運営に必要な経営支援を行うこととしております。
指宿枕崎線の指宿・枕崎間については,学識経験者や沿線自治体,JR九州等から構成される検討会議を設置し,将来の在り方の検討を進めております。検討に当たっては,これまで,沿線地域の商工関係者や高校生等によるワークショップを開催するなどの取組を進めてきており,今後,同線区が沿線地域へ与える経済的価値の調査・実証等を予定しております。
県としては,引き続き,関係者と一体となり検討を進めてまいります。
肥薩おれんじ鉄道については,学識経験者や沿線自治体,肥薩おれんじ鉄道等から構成される検討委員会を設置し,持続的な運行に向け,社会資本整備総合交付金の活用も視野に入れた「肥薩おれんじ鉄道沿線地域公共交通計画」の策定に向け,検討を進めております。
同鉄道は,旅客及び貨物輸送において重要な役割を担っていることから,県としては,同鉄道の安定した運行を確保するため,引き続き,関係者と一体となり取り組んでまいります。
屋久島航路については,物流の大部分を担う「フェリー屋久島2」が機器故障により昨年10月から運休しており,運航事業者は3月中の運航再開を目指しております。県では,これまで,関係事業者に協力依頼を行い,代替運送手段の確保に取り組んできました。また,屋久島町と県で構成する屋久島物流対策連絡会を設置し,生鮮食品や資材等の状況,農水産物の出荷に関する情報共有を行うとともに,船舶の運航スケジュール等の情報発信を行ってきました。これからの時期,かごしまブランドに指定されている屋久島のたんかんのほか,ばれいしょ等の出荷が最盛期を迎えます。「定時・定量・定質」のかごしまブランドの価値を維持するためにも,屋久島からの農水産物の出荷が滞りなく行われる必要があります。また,年度末に向け,県民生活に不可欠な警察職員や教員等が,屋久島町を含む県下で異動を行うこととなりますが,これらの異動にも影響を与えないようにする必要があります。これらを踏まえ,屋久島町に対し,同町が負担する代船運航に要する経費に対して支援することといたしました。
引き続き,「フェリー屋久島2」の運航再開まで,島民の方々に大きな影響が生じないよう,町,関係事業者等と連携して取り組んでまいります。
今月8日から,マリンポートかごしまと鹿屋港を結ぶ,小型高速船「なんきゅう」による定期航路の運航が開始されました。今後,新たな観光周遊ルートの開拓や県内各地への経済効果の波及につながるものと考えております。
川内原発については,先月16日に開催した県原子力安全・避難計画等防災専門委員会において,昨年11月に認可がなされた1,2号機の長期施設管理計画の審査内容について原子力規制庁から説明がなされました。また,川内原発の運転期間延長に関し,令和5年7月に行った県からの要請への対応について,原子力規制庁及び九州電力から説明がなされ,委員による議論を頂きました。
昨年11月に運転開始40年までの長期施設管理計画の認可を受けた川内原発2号機については,先月31日,九州電力が原子力規制委員会に対し,運転開始50年目までの長期施設管理計画の認可申請を行いました。
県としては,今後,県原子力専門委員会において,九州電力からその申請の内容について説明していただき,委員による議論を頂きたいと考えております。
原子力防災対策については,今月14日から16日にかけて3日間にわたり,国の原子力総合防災訓練が11年ぶりに本県で行われました。訓練では, 294の防災関係機関,約4,820人が参加し,能登半島地震等を踏まえ,新たに,孤立地区発生を想定した応急架橋訓練,通信障害時を想定した移動基地局車の設置訓練,モニタリングポストの欠測を想定した無人航空機による放射線モニタリング,所定の避難先へ避難できない事態を想定した代替の避難先への避難訓練などを実施しました。
訓練の実施結果については,国の実施成果報告や県訓練に対する外部評価,参加した関係機関及び県専門委員会の意見等を踏まえるなどして,今回の訓練についての課題等を整理し,来年度以降の計画の見直しや訓練に生かしてまいります。
今後とも,原発の立地県として,常に事故の発生を念頭に置き,県民の生命と暮らしを守る観点から,川内原発の安全対策・防災対策の充実・強化に取り組んでまいります。
高病原性鳥インフルエンザについては,昨年11月の出水市での発生に続き,12月と本年1月に,霧島市で今シーズン県内2例目と3例目が発生しました。県では直ちに発生農場等における鶏の殺処分など,一連の初動防疫措置を迅速に実施するとともに,鶏などの移動や搬出を制限する区域を設定し,消毒ポイントにおける車両消毒を実施するなど,まん延防止を図りました。その後,移動制限区域内の農場の清浄性確認検査で異状が認められなかったことなどから,先月31日午前0時をもって移動制限を解除しました。県としては,何としても更なる発生を防止したいと考えており,市町村や関係機関・団体と一体となって,最大級の防疫意識を持って,まん延防止対策に取り組んでまいります。
本県初の夜間中学となる「いろは中学校」については,新たな就学の機会を提供する場として,入学する生徒一人一人の思いを大切にし,いきいきと学べる学校を目指して,開陽高校の敷地内に,本年4月に開校することとしております。
県立高校の空調設備については,近年,猛暑日など気温の高い日が続く中,生徒が健康的かつ快適に教育を受ける環境を確保するため,学校生活の中心となる普通教室において,PTA等が設置した空調設備を県に移管し,光熱費や維持管理等に係る経費を県が負担することといたしました。
県立高校生の通学については,路線バス等の減便・廃止の影響により公共交通機関等の定期代の負担が増加した生徒に対し,本年度,緊急時限的な支援を行うとともに,これらの生徒以外に,より高額な通学費を負担している生徒が存在すると考えられたことから,通学状況に関する調査を実施しました。その結果,高額な通学費を負担している生徒が一定数存在することが把握できました。このため,県立高校の設置者として,通学費を理由に生徒が希望する学びを諦めることがないよう,高額な通学費を負担している生徒に対し通学費の一部を支援することとしました。
県立高校については,生徒それぞれの入学動機や進路希望,興味・関心や背景にある生活環境などが非常に多様なものとなっております。
また,現在1学年3学級以下のいわゆる小規模校が約半数となっております。少子化は今後も進行し,令和15年3月の中学校等卒業予定者数は13,240人となり,令和6年に比べて約2,100人の減少が見込まれております。
このような状況を踏まえ,生徒の多様な学びのニーズや生徒数の減少に対応するため,県教育委員会において,来年度,有識者で構成する検討委員会を設置し,望ましい県立高校の教育の在り方について検討することとしております。
県立短期大学については,更に魅力ある大学づくりに向け,有識者で構成する検討委員会において,時代の要請に対応した教育内容の充実などについて検討を行っております。
今月21日に開催予定の第5回の検討委員会では,魅力ある大学づくりに向けた提言を取りまとめていただくこととしており,来年度,県と県立短期大学において,提言の実現に向けて検討してまいりたいと考えております。
国際交流の促進については,本県がMOUを締結している台湾の屏東県を先月訪問し,周春米知事と今後の交流促進について意見交換を行ったほか,屏東県内を含む台湾南部地域からのインバウンド誘致に向けた観光プロモーションを実施しました。また,玉山銀行や台日産業連携推進オフィスを訪問し,今後の県内企業と台湾企業との産業交流に向けた意見交換を行いました。来年度は,第22回鹿児島・シンガポール交流会議をシンガポールで開催し,経済,観光,文化,青少年等の幅広い分野の更なる交流について協議することとしております。
これらの取組に加え,観光誘客や特産品の販路開拓,人材確保などの国際関連施策について,今後,相手国のニーズや特性等を十分に踏まえつつ,より効果的,戦略的に展開するため,来年度,今後の取組の方向性等をまとめた「鹿児島県国際戦略(仮称)」を策定したいと考えております。
明治日本の産業革命遺産については,本年7月に世界文化遺産登録10周年の節目を迎えることから,本遺産の価値や意義を改めて見つめ直す機会として,記念シンポジウムの開催などの記念事業を行うこととしており,効果的な普及啓発や情報発信に取り組むことで,価値あるこの遺産を次の世代に継承し,地域の発展に生かしてまいります。
スポーツの振興については,それぞれのリーグで優勝を目指す鹿児島ユナイテッドFC,鹿児島レブナイズ,フラーゴラッド鹿児島など,県民から愛され,その活躍や地域貢献活動が地域に活力をもたらすプロスポーツチーム等への支援に引き続き取り組むこととしております。
また,今月22日から来月9日にかけて,大学,社会人のトップチームやプロチームなど54チームが参加し,各カテゴリーの枠を超えた大規模な野球の交流戦として開催地を広げて開催される「薩摩おいどんリーグ2025」について,県としても引き続き支援してまいります。
男女共同参画・ジェンダー平等の推進については,地域における取組をより一層強化するため,先月,鹿児島市において,市町村長等を対象に,「地域から始めるジェンダー平等トップセミナー」を開催し,地方創生に向けたSDGsの取組に関する講演やジェンダーギャップ解消の取組事例の紹介等を行いました。
今後とも,男女共同参画社会の実現に向け,「第4次鹿児島県男女共同参画基本計画」に基づき,県民の意識啓発や気運醸成,女性活躍の推進など,各般の施策を積極的に推進してまいります。
地域で高齢者を支える仕組みづくりについては,高齢者が住み慣れた地域において,社会から孤立することなく継続して安心した生活を営むことができるよう,地域の多様な関係者が連携した高齢者支援の取組を促進してまいります。また,介護人材の確保については,外国人材を含む多様な人材の確保,介護職員の処遇改善などに取り組んでまいります。
感染症対策の推進については,昨年度改定した県感染症予防計画に基づき,医療機関等との協定による病床や発熱外来,自宅療養者等への医療の確保,感染症に対応する医療従事者等に対する研修の実施など,医療提供体制の整備等に取り組んでおります。
また,感染症危機に際して迅速に対処を行えるよう,感染症の特徴に応じた感染拡大防止策の機動的な適用や,国の定めた水準に基づく個人防護具等の備蓄などの対応策を盛り込んだ,県新型インフルエンザ等対策行動計画を本年3月に改定することとしております。
引き続き,平時の備えの充実を図るとともに,今後,市町村に対し,行動計画策定に向けた支援を行ってまいります。
消費者行政の推進については,県民の消費生活の更なる安定・向上を図るため,高齢者や若年者等の消費者被害が依然として後を絶たない状況などを踏まえつつ,引き続き,県消費者基本計画に基づき,消費者教育の推進や相談体制の充実・強化等に取り組んでまいります。
[4 歳入予算]
次に,歳入予算について申し上げます。
まず,県税については,最近における本県経済の動向や県税収入の状況,地方財政計画などを踏まえ,前年度当初予算に比べ,6.2パーセント増の1,684億10百万円を計上しております。
地方交付税については,地方の財源不足に対応するために地方交付税の代わりに発行する臨時財政対策債を加えた実質的な地方交付税総額で,前年度当初予算に比べ,0.5パーセント増の2,843億64百万円を計上しております。
県債については,650億84百万円を計上しております。
使用料・手数料については,必要な見直しを行うとともに,その他の収入についても,それぞれ見込みうる額を計上しております。
[5 令和6年度補正予算及びその他の議案]
次に,令和6年度補正予算について概要を申し上げます。
今回の補正予算は,高収益作物栽培に必要な農業機械の導入や畜産物の輸出推進体制の整備への支援など,国の補正予算に対応する経費等を計上することとしたほか,普通建設事業などの額の確定に伴う減額を行い,歳入については,県税等が増額となりました。
これらの結果,一般会計補正予算の総額は,91億81百万円の増となりました。
このほか,「鹿児島県事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例制定の件」など,条例案35件,その他の議案8件となっております。
何とぞよろしく御審議の上,議決していただきますようお願い申し上げます。
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