更新日:2024年5月27日
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令和6年第2回県議会定例会の開会に当たりまして,当面する県政の諸問題の推移及び今回提案しております議案その他の案件につきまして,概要を御説明申し上げます。
さて,我が国経済は,このところ足踏みもみられるものの,緩やかに回復しております。先行きについては,雇用・所得環境が改善する下で,各種政策の効果もあって,緩やかな回復が続くことが期待されますが,世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など,海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっております。また,物価上昇,中東地域をめぐる情勢,金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。さらに,令和6年能登半島地震の経済に与える影響に十分留意する必要があります。
県内経済は,緩やかに回復しておりますが,足元では,物価の高騰が続いており,県民生活への影響が生じております。
県としては,国の施策とも連携して,燃料油や飼料の価格高騰に対する交通事業者や生産者への支援,保育所や県立学校等の給食費等への支援による子育て世帯の経済的負担の軽減など,これまで計上した各種の事業を効果的に展開することにより,物価高騰の影響を受けている生活者や事業者の負担軽減に努めております。
今後も物価や景気の動向を踏まえ,必要な対応を講じてまいりたいと考えております。
本格的な人口減少や少子高齢化の進行,不安定な海外情勢等による物価の高騰,デジタル化の進展,カーボンニュートラルの実現など,昨今の社会経済情勢は大きく変化しております。
私としては,これらに的確に対応しつつ,本県の基幹産業である農林水産業,観光関連産業など鹿児島の「稼ぐ力」の向上,地域や各種産業を支える人材育成,結婚・妊娠・出産・子育てしやすい環境の整備や高齢者が健やかで生きがいが持てる社会の形成など,「かごしま未来創造ビジョン」に掲げた各般の施策に積極的に取り組むことにより,「誰もが安心して暮らし,活躍できる鹿児島」を目指してまいりたいと考えております。
今後とも,「県民の皆様と一緒に鹿児島の今と未来をつくる」ということを基本として,「誠実に」,「着実に」県政の推進に全力を挙げて取り組んでまいります。
県議会の皆様方をはじめ,県民の皆様方の御理解と一層の御支援を心からお願い申し上げます。
次に,最近の県政の展開の中で主な事項について御報告申し上げます。
川内原発については,3月13日に開催した県原子力安全・避難計画等防災専門委員会において,高経年化した発電用原子炉の安全規制に関し,原子力規制庁から,来年6月に本格施行されるGX脱炭素電源法に基づく新制度では,運転開始30年から10年を超えない期間ごとに,事業者が「長期施設管理計画」を策定し,原子力規制委員会の認可を受けることが必要となることなどについて説明がありました。
また,九州電力からは,川内原発1,2号機について,準備が整った段階で,長期施設管理計画の認可申請を行うとの説明がありました。
県としては,九州電力から原子力規制委員会に対し同計画の認可申請がなされた際には,県原子力専門委員会において,その内容等について御議論いただきたいと考えております。
防災対策については,国の原子力総合防災訓練が,本年度下半期に本県において実施されることとなりました。県としても,原子力防災対策のより一層の充実・強化を図るため,国や関係機関とともに訓練を行っていくこととしております。また,原子力防災アプリの更なる普及促進や,防災資機材の整備などに取り組むほか,昨年度策定した県避難退域時検査等実施計画に基づく訓練を新たに行うこととしております。
今後とも,原発の立地県として,常に事故の発生を念頭に置き,県民の生命と暮らしを守る観点から,川内原発の安全対策・防災対策の充実・強化に取り組んでまいります。
馬毛島における自衛隊施設の整備等については,関係機関・団体からの情報収集や,先月24日に開催した県と種子島1市2町による連絡会において,工事関係者の増加による宿泊施設の不足や,家賃の高止まりなど,地元の懸念事項等についてお聞きし,国に対して速やかに必要な対応を行うよう申し入れました。
今後も,工事関係者は増加する見通しとなっており,住民生活や地元経済への影響が懸念されます。
県としては,引き続き,国や地元市町と緊密に連携を図りながら,住民の安心・安全が確保され,また,環境保全措置が適切に講じられるよう,しっかりと取り組んでまいります。
鹿児島中央駅西口地区の県工業試験場跡地については,利活用の方向性を検討するため,周辺の土地所有者4者からなる連絡会のメンバーや経済団体,交通事業者,地域住民,都市計画等の専門的な知見を有する方々などを構成員とする「県工業試験場跡地利活用検討委員会」を設置し,来月,第1回委員会を開催することとしております。
県としては,4者連絡会で合意した「まちづくりの基本的な考え方」を尊重しつつ,同委員会の御議論を踏まえ,県民の皆様の御意見もお伺いしながら,丁寧に検討を進めてまいります。
鹿児島港本港区エリア一帯の利活用については,本年2月に作成・公表したエリアコンセプトプラン案に対する県議会での御論議や,パブリックコメントの結果等を踏まえ,3月29日にエリアコンセプトプランを策定したところであり,今後,同プランに基づくまちづくりを進めてまいります。
本年度は,県や鹿児島市,関係団体により構成する「鹿児島港本港区エリアまちづくり懇談会」を設置し,今月17日に第1回懇談会を開催いたしました。
同懇談会では,同エリアの利活用に関するこれまでの検討経過や今後の進め方等について御説明し,出席者からは,「施設整備を図る上で大事なことは港湾機能との共存である」,「北ふ頭でのクルーズ対応の出入国手続に必要な施設整備など,優先順位を考えながら進めていくことが大事である」といった御意見が出されるなど,活発な意見交換が行われました。
県としては,同懇談会における御意見等も踏まえ,エリアコンセプトプランの具体化に向けた取組を着実に進めてまいります。
スポーツ・コンベンションセンターの整備・運営については,先月5日に,事業者の募集・選定に係る入札公告を行いました。また,17日には入札説明書等に関する説明会を開催し,県内17社を含む35社の参加がありました。今月15日には,入札説明書等に関して,事業者から寄せられた質問に対する県の回答を公表し,22日から24日にかけて,入札参加表明書を受け付けました。
現在,入札参加希望者について,入札参加資格の確認作業を進めているところであり,来月7日までに,確認結果を通知することとしております。
来月12日と13日には,本事業の趣旨に対する入札参加者の理解を深め,県の意図と入札参加者の提案内容との間に齟齬が生じないようにすることを目的として,入札参加者との意見交換を実施することとしております。その後,9月27日には提案書を受け付け,事業者選定委員会による審査を経て11月に事業者を選定し,来年の第1回県議会定例会に,事業契約の締結について提案する予定としております。
同センターの整備運営事業に係る財源については,活用可能な国庫補助金を充当するほか,基本的に県有施設整備積立基金の全額を同事業に活用することとしております。本年度の当初予算においては,県農業試験場跡地25,26街区の売却見込額として約40億円を同基金に積み立てたところであり,両街区を入札した結果,売却額が約64億円となったことから,今回の補正予算において,差額の約24億円を積み増すことといたしました。
これらの財源を充当した上で,なお生じる不足に対しては,歳入・歳出両面にわたる徹底した行財政改革に取り組みながら,他の事業に影響が出ないよう,毎年度の財政運営の中で適切に対応してまいります。
県としては,スポーツ・コンベンションセンターが,スポーツ振興の拠点機能に加え,多目的利用による交流拠点機能を備えた施設として,また,県民や観光客が気軽に立ち寄れる開かれた施設として,さらに,中心市街地との回遊性を高めることにより,大きな経済波及効果をもたらす施設として,永年にわたり県民の皆様に親しまれ,誇りとなる施設となるよう,着実に整備に向けた取組を進めてまいります。
(誰もが個性と能力を発揮し活躍できる社会の実現)
男女共同参画・ジェンダー平等の推進については,引き続き,「第4次県男女共同参画基本計画」に基づき,県民の意識啓発や人材育成など各般の施策を積極的に展開することとしております。
来月から,地域・職場における男女共同参画の推進役となる人材の養成を目的とした講座を開催するほか,本年度は,新たに市町村長や地域住民を対象としたセミナーや啓発イベントを実施することとしております。
(結婚,妊娠・出産,子育ての希望がかなう社会の実現)
子ども医療費助成制度については,現在,住民税非課税世帯の高校生までを現物給付方式の対象としておりますが,未就学児が,成長や発達が著しく,生涯にわたる健康づくりの基盤となる重要な時期であることや,医療機関を受診する機会が多く,医療費の負担が大きいことなどを踏まえ,未就学児を対象に,課税世帯にも拡げることとしております。
新制度の導入に向けては,条例改正や受給者管理システムの改修,新たな受給者証発行等の準備を円滑に進められるよう,実施主体である市町村に対して,3月14日に説明会を開催し,新制度に対応した市町村条例の標準例を提示するとともに,審査支払機関や医師会等の関係機関と協議を行っております。
引き続き,市町村や関係機関と連携しながら,できるだけ早い時期に新制度を導入できるよう取り組んでまいります。
(健康で長生きできる社会の実現と良質な医療・介護の確保)
県民の健康づくりについては,本年3月に改定した健康かごしま21に基づき,生活習慣の改善や自然に健康になれる環境づくり等に取り組んでまいります。また,保健・医療・福祉のサービス提供体制等については,本年3月に改定した県保健医療計画や県高齢者保健福祉計画等に基づき,疾病予防の推進,疾病別・事業別の医療連携体制の確保,地域包括ケア体制の整備充実,介護人材の確保等に取り組んでまいります。
感染症対策の推進については,本年3月に改定した県感染症予防計画に基づき,病床確保,発熱外来等の感染症対応に関する協定を9月末を目途に医療機関等と締結することとしております。また,協定締結医療機関等の感染症への対応力を強化するため,医療機関等の施設・設備整備を支援することとし,今回の補正予算に必要な経費を計上いたしました。
今後とも,新興感染症発生時の医療提供体制の整備等に取り組んでまいります。
(地域を愛し世界に通用する人材の育成と文化・スポーツの振興)
特別支援学校の教育環境の改善については,曽於地区における新たな特別支援学校を志布志市の伊﨑田学園の敷地内に設置することとしており,今月,教育委員会において整備計画を取りまとめました。
今後,この整備計画に基づき,令和10年度の開校に向けた整備を進めることとしており,今回の補正予算において基本設計に要する経費を計上いたしました。
来年4月に開校する県内初の夜間中学については,これまでカリキュラム等の策定やシンポジウムの開催,基本設計等に取り組んできております。今議会においては,その名称を「鹿児島県立いろは中学校」とし,設置場所を鹿児島市とするなどの関係条例の改正案を提案いたしました。今後とも,施設の整備に取り組むとともに,入学説明会の開催など開校に向けた準備を進めてまいります。
県立短期大学については,更に魅力ある大学づくりに向け,時代の要請に対応した教育内容の更なる充実などについて検討するため,有識者で構成する検討委員会を設置し,今月31日に第1回検討委員会を開催することとしております。
検討委員会については,全体で5回程度の開催を予定しており,本年度末には同委員会において,魅力ある大学づくりに向けた提言を取りまとめていただきたいと考えております。
スポーツの振興については,今月5日,鹿児島レブナイズが,B3プレーオフにおいて,実力が拮抗したリーグ上位チームによる激しい昇格争いの結果,見事に準優勝し,7年ぶりのB2昇格を果たしました。
3月24日には,フラーゴラッド鹿児島が,V3リーグ初参戦で初優勝の快挙を達成しました。
来シーズンも,鹿児島レブナイズはB2リーグで,フラーゴラッド鹿児島は新Vリーグの舞台で存分にその実力を発揮することを期待しております。
このようなプロスポーツチーム等の活躍は,県民に夢と大きな感動を与えるものであり,県としても,県民から愛され,その活躍や地域貢献活動が地域に活力をもたらす,これらのチームへの支援に取り組んでまいります。
本年で第45回を迎える「霧島国際音楽祭」については,7月19日から8月4日にかけて実施する県内でのコンサートや講習会に加え,8月6日には,同音楽祭の堤剛音楽監督が館長を務める東京のサントリーホールにおいて,国内外のトップ奏者で構成するキリシマ祝祭管弦楽団による東京特別公演を実施することとしております。
今後とも,アジアを代表する音楽祭として,更に充実・発展していくことを目指してまいります。
(脱炭素社会の実現と豊かな自然との共生)
地球温暖化対策については,国の気候変動適応計画の変更等を踏まえ,本年3月に,県の地域気候変動適応計画を改定し,本県における気候変動の影響の整理や適応策の見直しを行いました。今後,同計画に基づき,農林水産業や自然生態系など各分野における適応策を推進するとともに,シンポジウムの開催など県民・事業者の理解を深めるための取組を進めることとしております。
温室効果ガス排出削減と経済成長の両立を図るGXの推進については,先月2日に,飼料用アミノ酸メーカーや畜産関係団体・事業者等と「鹿児島県畜産業におけるGX推進及び産業振興に向けた連携協定」を締結しました。様々な関係者が一体となって,栄養吸収率を高める飼料用アミノ酸を活用し,肥育期間の短縮等を図ることで,牛から排出される温室効果ガスの削減と,生産コストの低減・生産性の向上につなげることとしております。こうした取組により,本県の温室効果ガス排出量の約2割を占める畜産業におけるGXを推進してまいります。
このように,県全体で様々な関係者が一体となって畜産業におけるGXを推進する取組は全国初であり,本県が先駆けて取組を進めることで,畜産王国,「和牛日本一 鹿児島」の価値を更に高め,本県畜産業の「稼ぐ力」の向上につなげてまいりたいと考えております。
また,3月21日には,県工業技術センターが開発したセメントの代替となるシラス由来の火山ガラス微粉末が,いわゆる生コンの混和材として
JISに追加されました。同微粉末は,セメントと比較して製造時の温室効果ガスの排出量を約9割削減できるものであり,今後,同微粉末の量産化を促進し,低炭素型シラスコンクリートの普及に取り組むことにより,インフラ・建設分野におけるGXを推進してまいります。
再生可能エネルギーについては,「再生可能エネルギー導入ビジョン2023」に基づき,事業者等が行うマイクログリッド構築などの先進的な取組や再エネ設備,蓄電池の導入に対する支援などに取り組んでまいります。
洋上風力発電については,県が開催する洋上風力発電に関する研究会の参加団体等から反対する意見があることを踏まえ,今月10日が期限となっていた国への情報提供を見送ったところですが,引き続き,研究会において関係者の意見を丁寧に聞きながら,議論を行ってまいります。
(安心・安全な県民生活の実現)
昨年は,6月下旬から7月上旬の大雨や台風第6号により,県内の広い範囲で道路等の公共土木施設などの被害が発生しました。
本年も,梅雨入りの時期を迎えており,これから秋口にかけて集中豪雨などによる災害が発生しやすくなってまいります。
昨日には,奄美市において,地域住民や約80の機関・団体など約1,000人の参加の下,地震による多数の負傷者の発生,豪雨による河川の氾濫やがけ崩れなど,複合災害を想定した県総合防災訓練を実施しました。
今回の訓練においては,能登半島地震も踏まえ,住民による避難所運営や,広域搬送拠点臨時医療施設の設置などに取り組むとともに,新たな取組として,島外からのDMATや資機材の輸送などに取り組みました。
今後とも,住民への適時・適切な情報伝達や円滑な避難が図られるよう,市町村や関係機関との連携に努めてまいります。
県民の皆様におかれましては,日頃から危険箇所や避難場所,避難経路を確認し,災害時には早めの避難に心がけていただくなど,備えに万全を期していただくようお願い申し上げます。
(快適な生活環境の向上と世界につながる県土の創造)
高規格道路については,国の令和6年度予算において,東九州自動車道や南九州西回り自動車道などの整備推進に必要な事業費が確保されました。また,本年3月には,東九州自動車道の国分インターから末吉財部インター間のうち7.1キロメートル区間について,国土交通大臣から西日本高速道路株式会社へ4車線化の事業許可がなされました。
北薩横断道路については,さつま広橋インターから佐志インター間を本年3月に供用開始したところであり,都城志布志道路については,志布志道路において,令和6年度中の供用に向け整備を進めております。
今後とも,高規格道路の早期供用に向け,国と一体となって,整備に努めてまいります。
屋久島空港については,ジェット機就航に必要な滑走路の延長事業が,令和6年度の新規事業として,国から採択されました。滑走路が延長されますと,関東方面など都市圏からの直行便開設により所要時間が大幅に短縮されることから,交流人口の更なる拡大や農林水産物等の迅速な輸送が可能となるなど,地域経済の活性化に寄与するものと期待しております。県としては,地元屋久島町と一体となって,早期完成に向けて取り組んでまいります。
川内港については,地域の産業の競争力強化を支える効率的かつ経済的な貨物の輸出入の実現に向けて,国際物流ターミナル整備事業により,新たな岸壁やふ頭用地の整備を進めており,先月26日と今月23日に港湾利用者を対象とした説明会を開催しました。引き続き,国と連携を図りながら,着実な整備に取り組んでまいります。
市や関係者の皆様から御要望を頂いているガントリークレーン等の整備については,港湾利用者の皆様の考えも丁寧にお聞きしながら検討を進めてまいりたいと考えております。
肥薩おれんじ鉄道については,旅客及び貨物輸送において重要な役割を担っており,同鉄道の安定した運行を確保するため,県,沿線自治体だけでなく,県下全市町村で支援する方策として,引き続き,県市町村振興協
会の基金を活用することについて,先般,関係団体の御理解を頂きました。
県としては,県市町村振興協会から頂いた付帯要請事項等も踏まえ,関係自治体や鉄道事業者等で構成する協議会を設置し,利用者の利便性を確保しつつ,将来にわたり持続的に運行可能となる方策を検討することとしており,これらに要する経費について,今回の補正予算に計上いたしました。
(個性を生かした地域づくりと移住・交流の促進)
昨年度の県外からの移住者数は,市町村の把握では,2,578人となっており,引き続き高い水準で推移しております。
移住・交流の促進については,地方移住への関心が高まっているこの機会を逃すことなく,より多くの方々に本県を選んでもらう必要があることから,移住希望者のニーズに応じた柔軟な対応ができるよう,移住者支援に直接携わる市町村担当者等との情報共有や意見交換を行う会議を先月25日に開催するなど,関係者間の連携を強化してきております。6月と7月に東京で開催予定の「九州・山口・沖縄合同移住フェア」や移住相談会においては,東京のふるさと回帰支援センターの移住・交流相談員や市町村担当者等とも協力してブース等を運営することとしており,全国を対象とした移住イベント等への参加に当たっては,こうした関係者間の連携を生かしながら,本県への移住の魅力についてPRすることとしております。
ワーケーションの推進については,関係人口の創出・拡大を図り,将来的な移住者の増加につなげるため,本年度新たに市町村を対象とした先進事例等を紹介するセミナーを6月に開催し,関係者の理解を深めた上で,7月に県外企業と県内市町村とのマッチングイベントを開催するなど,より効果的な業務型ワーケーションの推進を図っていくこととしております。
買物弱者対策については,市町村の社会福祉協議会等において住民等からの相談に対応しているところですが,先月から,新たに,市町村や事業者等からの相談を受け付ける窓口を県社会福祉協議会に設置するとともに,県のホームページ等により住民向け買物支援サービスなどの情報発信を行っております。
今後,市町村に対し,新たな買物支援の検討や移動販売等の導入支援に必要な経費を助成するなど,市町村や事業者等と連携して,買物弱者対策を推進してまいります。
地域人口の急減に対応し,人材の確保を図る特定地域づくり事業を推進するため,先月,全国42道府県が共同で「特定地域づくり事業推進全国協議会」を設立し,私が会長に就任しました。
本協議会では,特定地域づくり事業の普及・推進についての情報を共有するとともに,必要な予算の確保や支援制度の拡充等について国に働きかけを行うこととしており,明後日29日に要望活動を行う予定としております。
(多様で魅力ある奄美・離島の振興)
奄美群島の振興については,3月29日に奄美群島振興開発特別措置法の改正法が成立しました。関係国会議員や県議会及び関係省庁の皆様方のこれまでの御尽力に心から感謝申し上げます。
改正奄振法においては,法律期限の5年間の延長に加えて,県が実施した奄振総合調査を踏まえ,関係国会議員や県議会,地元市町村等と一体となって国に要望した,「沖縄との連携」をはじめとする内容が反映されており,奄美群島の自立的発展を図る上で,大変意義深いものと考えております。
改正奄振法の成立を受けて,県としても,国が策定した奄美群島振興開発基本方針やパブリック・コメントによる県民の皆様の意見などを踏まえ,速やかに新たな奄美群島振興開発計画を策定し,国や市町村等と連携して着実な事業の推進に努め,我が国の地域振興の先進地域となるよう,奄美群島の振興・発展に一層全力を尽くしてまいります。
離島の振興については,特定有人国境離島地域における航路・航空路運賃の低廉化や輸送コスト支援などを着実に実施するとともに,自然条件等が特に厳しい離島地域における特定離島ふるさとおこし推進事業などを実施し,離島地域の活性化に着実に取り組んでまいります。
(農林水産業の「稼ぐ力」の向上)
国においては,世界の食料需給の変動や,我が国における人口の減少など,諸情勢の変化に対応し,食料安全保障の確保や農業の持続的な発展などを図るため,「食料安全保障の確保」や「環境と調和のとれた食料システムの確立」など4つの柱を盛り込んだ「食料・農業・農村基本法」の見直しを進めており,現在,国会で審議が行われております。
県としては,国の農業政策と足並みをそろえて,食料生産に不可欠な肥料・飼料等の県内資源の活用や,生産資材の価格高騰等による影響緩和に加え,スマート農林水産業による成長産業化,農林水産物の輸出促進などに取り組み,我が国の食料供給基地としての役割を果たすとともに,本県農業の更なる振興を図ってまいりたいと考えております。
農林水産物の輸出促進については,「鹿児島県農林水産物輸出促進ビジョン」における令和7年度の輸出目標額約500億円の実現に向けて,官民一体となって輸出推進体制を構築するため令和5年度に設置した「GFP鹿児島」を活用しながら,引き続き,生産体制と販売力の強化に取り組んでまいります。先月18日から今月15日にかけては,米国のスーパーマーケット10店舗において,お茶や水産加工品などの県産品フェアを開催したところであり,今月28日からはタイ,来月26日からは台湾において,和牛日本一となった「鹿児島和牛」の更なる販路拡大に向け,それぞれの国・地域最大級の食品展示会・商談会に出展することとしております。
農業の担い手確保・育成については,認定農業者など全国の農業の担い手が一堂に会し,相互研鑽と交流を通じて,農業者自らの経営改善や地域農業・農村の発展に寄与する機会として開催されている全国農業担い手サミットを令和7年度に本県で開催したいと考えており,今回の補正予算において開催準備に必要な経費を計上いたしました。
林業の振興については,多様で豊かな自然や多彩で豊富な食材などの本県の魅力を全国に発信するとともに,森林等の緑が果たす役割について県民の理解を深めるため,令和11年に開催される第79回全国植樹祭を本県に招致することとしたところであり,今後,その実現に向けて取り組んでまいります。
林業の担い手確保・育成については,「かごしま林業大学校」の令和7年度の開校に向け,研修生募集のためのパンフレットやポスターを作成し,今月から県内全ての高校等を対象に,個別訪問による広報活動に取り組んでおり,7月には,「森の研修館かごしま」においてオープンキャンパスを開催することとしております。
引き続き,研修カリキュラムの編成や研修講師の確保・育成の取組など,開校に向けた準備を進めてまいります。
水産業の振興については,生産量日本一を誇る養殖ブリの人工種苗生産施設を拡充し,養殖業者のニーズに対応できる早期人工種苗の生産による周年出荷体制等を強化することとしております。先月には,増産に向けた100トン水槽4面を備えるブリ親魚棟の新築工事と早期種苗の生産に必要な既存施設の冷却機能強化の工事に着手しました。
水産業の担い手確保・育成については,来月28日に漁業就業希望者を対象に,漁業の基礎知識に関する講義や,刺し網漁業の体験などを行う「かごしま漁業学校」の入門研修を開催することとしております。
(観光の「稼ぐ力」の向上)
新型コロナウイルス感染症の影響で大きく落ち込んだ旅行需要は,昨年5月に同感染症が5類に変更され,経済社会活動が活発化する中で徐々に回復してきており,県の観光動向調査によると,3月の県内宿泊者数・外国人宿泊者数がともにコロナ禍前の8割程度の水準となっております。
国内からの誘客については,様々な機会を活用して「南の宝箱 鹿児島」の宝物を積極的に情報発信し,観光客誘致に取り組むこととしており,直近では,先月の1か月間,JRグループと連携し,全国のJR主要駅
約800駅に「南の宝箱 鹿児島」のPRポスターを掲出するなど,集中的な宣伝を行いました。
海外からの誘客については,昨年の香港エクスプレス航空と大韓航空の定期便再開に続き,本年3月には,香港航空の定期便が再開されたほか,ベトナム航空によるチャーター便も運航されました。また,今月7日にはチャイナエアラインによる台北線が週2便で再開しました。私も鹿児島空港で香港やベトナム,台湾からのお客様をお出迎えしました。
9月からは,大韓航空によるソウル線が週3便から週5便に増便することとなっております。
引き続き,鹿児島空港国際線の更なる充実と再開及び安定的運航を図るための航空会社への運航支援を行うとともに,現地での旅行会社等へのセールスやプロモーションなどを積極的に展開してまいります。
他方で,国際定期便の充実に当たっては,グランドハンドリングなどの受入体制の確保が引き続き課題となっていることから,職員の採用支援や航空会社に対する応援職員の派遣要請などに引き続き取り組むとともに,今後の増便等も見据え,新規事業者の参入を促すため,参入に当たっての課題である安定的な運営に必要な経営支援を行うこととしております。引き続き,空港や観光の関係者と連携の上,空港受入体制の確保を図ってまいります。
クルーズ船については,昨年3月の国際クルーズ船受入れ再開以降,鹿児島港で82回,県全体で合計125回の寄港がありました。また,本年は7月までの見込みで107回の寄港が予定されており,過去最高であった令和元年を上回るペースとなっております。3月30日には,鹿児島港の本港区北ふ頭とマリンポートかごしまに初めて3隻同時にクルーズ船が寄港し,欧米等から本県を訪れた約2,000名の乗客の皆様に,桜島や仙巌園,知覧武家屋敷などの観光地を周遊していただきました。
引き続き,本県の地理的優位性や美しい自然,豊かな食などの世界に誇れる宝物を最大限生かしながら,クルーズ船の寄港の増加や定着に向けて,寄港地観光ツアーの素材の提案や船会社等へのセールス等を実施してまいります。
(企業の「稼ぐ力」の向上)
企業の生産性向上に向けては,中小企業におけるDX化,製造業・サービス業におけるAI,IoT等の導入による自動化・省力化の取組に対して,現下の物価高騰や人手不足の状況を踏まえ,規模を大幅に拡充した上で集中的な支援を行うこととしております。このうち,ものづくり企業が行うAI,IoT等を活用した生産性向上の取組の支援については約40件,食品関連製造業が行う生産工程の自動化・省力化等の取組の支援については約80件の応募があり,来月初旬の採択に向け,審査を行っております。
企業立地の推進については,昨年度は半導体関連企業や情報通信関連企業を含む42件の立地が決定しております。
TSMCの熊本進出を契機として,今後,半導体関連企業等の本県への進出が期待されることや,昨今,製造業において国内回帰・国内生産体制の強化を図る動きが見られること等を踏まえ,本年度,産業用地確保に向けた調査事業を実施することとしており,まずは,民間企業約1,000社に対して,進出意向や設備投資の動向,立地条件等に係るアンケート調査を行うこととしております。
スタートアップの創出・育成に向けては,若い世代の起業家マインドの養成や起業の初期段階における実証事業への支援,安定・拡大期における研究開発や設備投資等への支援など,各段階に応じた集中的かつ継続的な伴走支援を行っております。このような中,本県出身の県外起業家が中心となり,地元起業家を支援する取組も広がってきており,今後,これらの機運の高まりを受け,スタートアップが自発的・連続的に生み出されることを期待しております。
宇宙ビジネスについては,大規模な基金の設置による民間企業等の先端技術開発,商業化等への支援などの国の動きも踏まえ,県内企業の参入を促進するため,宇宙ビジネスに関する実態調査を行うこととしております。今後,新規参入の余地がある事業分野や,新規参入につながる技術を有する県内企業等について調査を行い,種子島・内之浦両射場の立地等を活かした県内企業の参入支援や企業誘致等の取組に活用することとしております。
本格焼酎については,若者や女性をターゲットに首都圏や東北地方での更なる消費拡大を図るため,今月23日に,宮城県仙台市に本社がある大手酒販店の株式会社やまやと,本格焼酎をはじめとする県産品の販路拡大等に関する連携協定を締結いたしました。
同社は,東北地方を中心に300店舗以上の酒類専門店を展開しており,また,グループ企業に全国展開の外食チェーン店などを有することから,本協定の締結を契機に,同社の流通販売に関するノウハウ・資源を生かしたPR・販売促進活動を積極的に展開することにより,本格焼酎をはじめとする県産品の更なる販路拡大を図ってまいります。
(多彩なキャリアをデザインできる働き方の創出)
県内の雇用情勢については,3月の有効求人倍率は1.20倍となっており,前月より0.01ポイント減少しておりますが,昨年4月以降は,おおむね横ばいの傾向が続いております。
本年3月新規学卒者の就職内定率は,高校,短大,大学ともに,おおむね堅調に推移しております。一方で,県内就職率については,近年増加傾向にあったものの,新型コロナウイルス感染症の5類移行の影響などによる県外志向の高まりから減少に転じており,今後も生産年齢人口の減少が見込まれる中で,産業人材の確保は喫緊の課題となっております。
県としては,本年3月に,来春卒業予定の大学生等を対象とした合同企業説明会を開催したほか,今月15日には来春卒業予定の高校生の県内就職に向け,鹿児島労働局と合同で,県内企業に対して求人票の早期提出・早期選考の実施や県内企業の魅力・認知度向上への取組等の要請を行いました。また,来月8日から9日にかけて,高校生とその保護者に対する合同企業説明会を開催することとしております。
今後とも,国や関係機関と連携しながら,新規学卒者の県内就職の促進に努めてまいります。
外国人材については,国内で不足する高度デジタル人材をバングラデシュから獲得するモデルの構築を図るため,昨年度から,本県での就業に向けた県内企業におけるインターンシップに取り組んでおり,参加者の本県での就業に結びついております。
今月11日には,バングラデシュにおいて,コンピューターサイエンスを専攻する現地大学生等を対象に開催されたプログラミングコンテストで,本県の取組や県内企業の魅力をPRしてまいりました。
今後も引き続き,高度デジタル外国人材を含む外国人材の確保に取り組んでまいります。
(デジタルテクノロジーを活用した県民の暮らしの質の向上)
デジタル化の推進については,市町村におけるデジタル化の取組を支援するため,業務改善や行政手続のオンライン化等のDX推進を実務的に伴走支援するデジタル人材を県において確保し,選定した6市町村に来月から派遣することとしております。
(持続可能な行財政運営)
職員の人材育成等については,若手職員を中心に構成する「鹿児島県庁働き方改革ワーキンググループ」での議論も踏まえ,本年3月に,目指すべき職員像や人材育成の取組の方向性などを盛り込んだ「鹿児島県職員人財育成ビジョン」を策定しました。
今後,同ビジョンに基づき,人材の育成・成長に向け,職員のキャリアプラン形成支援や,人事評価制度の人材育成での更なる活用,研修の更なる充実などに取り組むこととしております。
また,働きやすい職場環境づくりに向け,職員がその能力を公務の場以外で広く役立てるための兼業・副業の推進などに取り組むこととしております。
加えて,特に人材確保が喫緊の課題となっていることを踏まえ,本年度から,同ワーキンググループにおいて,人材確保に向けた具体的な取組の充実・強化について重点的に検討を進めてまいりたいと考えております。
公文書の管理については,本年度から,公文書等の管理に関する条例が本格的に施行されており,歴史資料として重要な公文書である特定歴史公文書の適切な保存・利用等に向けて,現在,特定歴史公文書として保存すべき公文書の選別作業を進めております。
また,特定歴史公文書の利用等を積極的に推進する観点から,公文書館の設置に向けて検討を進めたいと考えております。まずは本年度,公文書管理委員会において,本県の公文書館に求められる機能などについて意見聴取を行うこととしており,今月31日に本年度第1回目の委員会を開催することとしております。
県議会の皆様方をはじめ,県民の皆様方の御理解と一層の御支援を心からお願い申し上げます。
次に,補正予算の概要について御説明申し上げます。
今回の補正予算は,新興感染症発生時に備えた医療機関における施設整備等の支援に要する経費のほか,曽於地区における新たな特別支援学校の整備に要する経費等を計上することとしております。
補正予算の総額は,一般会計で28億7百万円であり,この結果,補正後の一般会計の予算額は,8,433億17百万円となっております。この財源については,財産収入,繰入金,国庫支出金等をもって充てることとしております。
このほか,予算外の議案として,「鹿児島県手数料徴収条例の一部を改正する条例制定の件」など,条例案7件,その他の議案6件,報告3件となっております。
何とぞよろしく御審議の上,議決していただきますようお願い申し上げます。
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