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更新日:2024年3月29日

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研究報告(令和5年度)

1高温登熟性に優れる水稲新品種「あきの舞」の育成とその特性

濵﨑翔悟・竹牟禮穣・田之頭拓・若松謙一・園田純也・田中明男・松田慶五・大村幸次

水稲新品種「あきの舞」は,鹿児島県農業開発総合センターにおいて普通期栽培用の中生熟期,高温登
熟性,高品質,病害虫抵抗性,多収・良食味を目標に,高温登熟性の優れる良食味品種の「西南136号(な
つほのか)」を母本とし,多収・良食味でトビイロウンカ抵抗性遺伝子を有する「関東263号」を父本とし
て2013年に交配を行った組合せから選抜した.その結果,普通期栽培用早生~中生熟期で,高温登熟性の
優れる良食味品種として育成を完了し,2023年3月に鹿児島県の水稲奨励品種に採用され,2023年3月に
品種登録を出願した.「あきの舞」は,「ヒノヒカリ」と比較して出穂期で2日,成熟期で6日遅い.高温
登熟耐性が強いため,玄米外観品質は「ヒノヒカリ」よりも優れる.「ヒノヒカリ」と比べ,稈長,穂長,
穂数は同程度であるが,玄米千粒重が重く,収量性が高い.耐倒伏性は「ヒノヒカリ」と同程度,いもち
病抵抗性は葉いもちが“強”,穂いもちが“中”で「ヒノヒカリ」よりも強い.食味は「ヒノヒカリ」と同
等の“極良”である.

高温登熟性に優れる水稲新品種「あきの舞」の育成とその特性(PDF:1,280KB)

2果皮が赤橙色で年内収穫に適したカンキツ「KC-5」の育成

稲森博行・岩田浩二・中村一英・坂上陽美・川村秀和・若松謙一・白山竜次

カンキツ「KC-5」は,2005年に鹿児島県農業開発総合センターにおいて,「べにばえ」に「かん
きつ中間母本農5号」を交雑して育成し,2023年3月に品種登録を申請した.樹勢は中程度,樹
姿は“中間”,葉身の形は“披針形”で,枝長と葉面積は「べにばえ」と同程度である.着花性は
良い.育成地において果実の成熟期は12月上旬で,果実重120~150g程度,果形指数は110~120
程度の“扁球形”である.果皮色は,オレンジ色系カラーチャート値9~12で,赤橙色である.
果皮には「べにばえ」由来のアンコール香がある.種子はない.糖度は13°以上,クエン酸含量は
1g/100ml以下で,食味は良好である.

果皮が赤橙色で年内収穫に適したカンキツ「KC-5」の育成(PDF:597KB)

3夏秋スプレーギク新品種「サザンサマーホワイト」および「サザングレイス」の育成とその特性

南公宗・今給黎征郎・白山竜次・若松謙一

鹿児島県農業開発総合センターでは,高温・長日期の作型でも開花遅延しにくい白色の夏秋スプ
レーギク「サザンサマーホワイト」および「サザングレイス」の2品種を育成した.「サザンサマ
ーホワイト」は,花色が桃色の「サザンサマーピンク」の自然突然変異株から育成した白色品種で
ある.花色以外の生育特性は,「サザンサマーピンク」と同等で,到花日数は45~52日で,高温
の年次でも開花遅延の程度が小さく,計画的出荷が行いやすい.6月出しは低温の影響により,ア
ントシアニン色素が花弁に発色するため,施設7~9月出しを中心とした栽培に適している.「サ
ザングレイス」は,交雑育種で作出した花弁数が多い半八重咲き白色品種で,到花日数が45~52
日である.6月出しの低温期でも花弁にアントシアニン色素の発色がなく,また高温の年次でも開
花遅延しにくいため,6~9月出しの幅広い作型に適している.

夏秋スプレーギク新品種「サザンサマーホワイト」および「サザングレイス」の育成とその特性(PDF:1,876KB)

4鹿児島県における自給率向上のための飼料作物適応性試験

内村涼子・田中翔太朗・加治佐修・町田豊

近年の輸入粗飼料の価格高騰により,肉用牛農家や酪農家の経営は,非常に厳しい状況にある.
自給粗飼料の安定的な生産・利用は,農家経営における収益性改善につながることから,本県に適
した特性をもつ草種や品種の選定が急務となっている.そこで,本県の主要な春夏作であるソルガ
ムについて,現在の奨励品種より優良な品種を選定するため5品種の品種比較試験を行った.その
結果,県奨励品種である「スダックス」に対し,「元気ソルゴー」は耐倒伏性に優れ,稈径が細い
ことから台風に強く,ロールベール利用体系に適することが明らかとなった.また,県内の繁殖雌
牛の頭数約13万頭のうち25%が飼育されている離島においても自給飼料増産は喫緊の課題となっ
ている.今回,離島で広く栽培されているローズグラスの代替作物として期待される「トランスバ
ーラ」(草種名:ディジットグラス)の特性を徳之島で調査した結果,収穫1回当たりの乾物収量
は339kg/10a,生草の飼料成分はCP含量が9.0%であり,ローズグラスの成分分析値と同程度であ
った.

鹿児島県における自給率向上のための飼料作物適応性試験(PDF:853KB)

5黒毛和種子牛の新たな哺育技術の検討

森岡春樹・浦底早紀・諏訪寛太・坂下邦仁・川畑健次

哺乳期における子牛管理の省力化と飼料摂取量向上のため,哺乳している56日間に自然哺乳(親子
同居)33日と制限哺乳(親子分離)23日を組み合わせた試験区と,高タンパク低脂肪代用乳で人工哺
育した対照区を比較した.その結果,42日齢(離乳前)の飼料摂取量は試験区が対照区より少なく
(P<0.05),体重,胸囲,腹囲も小さかったが(P<0.05),試験区は53日齢以降,飼料摂取量が急増し,
56日齢以降の飼料摂取量や発育に対照区との差は認められなかった.

黒毛和種子牛の新たな哺育技術の検討(PDF:1,144KB)

6乳用牛の夏期高温時における暑熱対策技術の開発

山﨑彦樹・上野紀衣・東山崎達生・脇大作・川畑健次

暑熱対策として,乳用牛が散水を自発的に利用できる改良型ソーカーを牛舎内に設置し,牛の利
用状況及び乳量への影響を調査した.改良型ソーカーで牛体に散水したところ30分後の体温が有
意(p<0.01)に低下したが,酸化ストレス指標であるスルフヒドリル基,チオバルビタール酸反応
物質に差は見られなかった.また,改良型ソーカーと送風機を24時間稼働させた試験区は,送風機
のみを稼働させた対照区に比べ散水4~6日後の乳量が有意(p<0.01)に増加し,改良型ソーカーが
体温低下と乳量の増加に影響を及ぼすことが確認できた.また,改良型ソーカーの牛の利用状況を
24時間調査したところ,頻繁に利用している個体が改良型ソーカー設置場所を占有していることが
確認された.

乳用牛の夏期高温時における暑熱対策技術の開発(PDF:677KB)

7出荷体重や発育速度の違いがかごしま黒豚の肉質特性に及ぼす影響

大小田勉・井之上弘樹・高橋宏敬・喜田克憲・多田司・井尻大地・大塚彰

要約

バークシャー種であるかごしま黒豚の出荷体重や発育速度が肉質に及ぼす影響を調べた.出荷
体重では単飼・制限給餌で肥育した90kg区,115kg区,130kg区を設定し,発育速度では出荷体重
の115kg区を対照区とし,エネルギー量の高い餌を群飼で不断給餌した群で出荷日齢の早い豚を
追い込み区とした.出荷日齢は出荷体重の3区が182日齢,224日齢,260日齢となり,追い込み
区が173日齢となった.肉質への影響をロースブロックで調べた結果,出荷体重や発育速度の違い
は保水性や硬さに影響しなかったが,背脂肪において,脂肪融点は130kg区が115kgより低く
(P<0.05),α-トコフェロールは130kg区が他の2区より低かった(P<0.05).飽和脂肪酸割合では
対照区より追い込み区が高かった(P<0.05).出荷体重や発育速度の違いはいずれも消費型官能評
価(総合評価)に影響しなかった.出荷体重や発育速度の違いはかごしま黒豚の脂肪組織へ影響し,
影響する項目はそれぞれ異なっていた.

出荷体重や発育速度の違いがかごしま黒豚の肉質特性に及ぼす影響(PDF:948KB)

8近赤外線簡易測定装置を用いた和牛肉の一般成分,グルタミン酸,イノシン酸,ペプチド,リン脂質の推定方法

林大貴・西浩二・德丸元幸・鬼塚剛

要約

鹿児島県産肥育牛224頭の胸最長筋切開部の近赤外スペクトルデータと理化学分析値から,食肉
脂質測定装置による「おいしさ」関連成分の検量線を作成した.検量線による予測値と理化学分析
値を比較した結果,蛋白質含量,粗脂肪含量,水分含量,グルタミン酸濃度,リン脂質濃度及びペ
プチド濃度は相関係数が0.7以上の正の相関を示した.これらのことから,6成分については,食肉
脂質測定装置(S-7040;相馬工学,東京,日本)による簡易測定が十分に可能であると考えられた.
食肉処理場にて,107頭の胸最長筋を簡易測定した結果,BMSナンバーが高くなるにつれて,粗脂
肪含量は増加し,逆に蛋白質含量,水分含量,ペプチド濃度は低下する傾向がみられた.

近赤外線簡易測定装置を用いた和牛肉の一般成分,グルタミン酸,イノシン酸,ペプチド,リン脂質の推定方法(PDF:1,118KB)

9「鹿児島黒牛」のゲノミック評価法の開発

中島亮太朗・鬼塚剛・磯部知弘

要約

「鹿児島黒牛」の県有種雄牛選抜の一指標となるゲノミック評価法について検討するため,鹿児
島県内産黒毛和種肥育牛からサンプルを採取してDNA一塩基多型(SNP)データを得るとともに,
当該牛の枝肉成績(枝肉6形質;n=3,926)の収集,脂肪酸組成2形質(n=1,310)および脂肪交雑
形状3形質(n=482)を測定した.得られた情報を基にデータベースを構築し,県有種雄牛のゲノ
ム育種価を算出した.さらに,ゲノム育種価による種雄牛の遺伝的能力の推定精度を検証するため,
算出したゲノム育種価と,現場後代検定成績に基づく期待枝肉成績もしくは推定育種価との相関を
調べたところ,枝肉6形質,一価不飽和脂肪酸含有率及び細かさ指数で相関係数(r)≧0.7と強い
相関があった.今後は,本県の黒毛和種におけるゲノミック評価のさらなる精度向上のため,引き
続きサンプルを積み上げるとともに,種雄牛選抜への活用を含む様々な応用について検討していく
必要がある.

「鹿児島黒牛」のゲノミック評価法の開発(PDF:388KB)

よくあるご質問

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農政部農業開発総合センター企画調整部

電話番号:099-245-1114

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