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更新日:2025年3月10日

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研究報告(令和6年度)

ソラマメ「はるのそら」の育成とその特性

佐々木真歩・池澤和広・桑鶴紀充・中島純・満留克俊

要約
ソラマメ「はるのそら」は,鹿児島県農業開発総合センターにおいて2010年にL莢率の高い「唐比の春」を母,低温に遭遇しなくても開花が早い「駒栄」から莢,子実が大きい個体を選抜固定した系統「FB-E-1」を父として交配し,2023年に育成した.「はるのそら」は,低温処理なしでも低温処理した慣行品種の「唐比の春」と同時期に開花し,開花節位も同程度である.また,商品収量は「唐比の春」と同程度,莢および子実の大きさも同程度で,しみ症の発生率が低い.

ソラマメ「はるのそら」の育成とその特性(PDF:1,475KB)

チルド加工適性の高いバレイショ新品種「こいじゃ」の育成とその特性

田中義弘・柏木伸哉・小玉泰生・末川修・出田悠晟・田中明男・竹牟禮穣・竹之下佳久・佐藤光徳

要約
鹿児島県のチルド加工用バレイショとして主に利用されている品種は,早生の「とうや」および中晩生の「ホッカイコガネ」である.「ホッカイコガネ」はジャガイモシストセンチュウ抵抗性がない.シストセンチュウが県内に侵入した場合には壊滅的な被害を受ける可能性が危惧される.そのため,現在利用されている品種と同等以上の収量でシストセンチュウ抵抗性を持つ品種が強く要望されている.「こいじゃ」は,鹿児島県の主力品種の「ニシユタカ」を母,シストセンチュウ抵抗性を有し高でん粉な原料用品種「サクラフブキ」を父として交配し,採種した実生集団より選抜を開始し2024年に育成したチルド加工用品種である.「こいじゃ」は,シストセンチュウ抵抗性を有し,上イモ個数,上イモ収量,でん粉価,チルド加工適性が「ホッカイコガネ」と同等である.

チルド加工適性の高いバレイショ新品種「こいじゃ」の育成とその特性(PDF:1,759KB)

黒ボク土畑における下水汚泥肥料の施用によるサツマイモ-露地野菜体系での持続的な生産に関する研究

勝田雅人・上薗一郎・肥後修一・脇門英美・森清文

要約
多腐植質厚層アロフェン質黒ボク土壌において,鹿児島県の下水汚泥肥料施用ガイドラインに基づき,1作当たり500gm-2あるいは1kgm-2程度の下水汚泥肥料を施用した連用試験を10年間実施し,春夏作:サツマイモ-秋冬作:露地野菜の輪作体系での収量,植物体や土壌中の重金属量などに及ぼす影響を検討した.下水汚泥肥料の窒素肥効率を考慮し,不足する肥料成分を化学肥料で補給する施肥法により,収量は,化学肥料のみの栽培と同等であった.収穫物可食部中のカドミウム含量については,各作物ともコーデックス委員会が定める国際基準値を大きく下回った.当栽培体系における銅,亜鉛およびカドミウムの収支解析から,下水汚泥肥料による施肥は銅,亜鉛およびカドミウムの投入量に対して作物吸収量が少ないため,これら重金属は土壌に蓄積されたものの,下水汚泥肥料の連続的な施用による土壌に蓄積する含量は公的な基準値に比べて低かった.以上,サツマイモ-露地野菜の栽培体系において,下水汚泥肥料を1作当たり500gm-2程度の10年間連年施用は,窒素肥効率や不足する養分を補給する施肥によって,化学肥料のみの施肥と同等な収量が確保でき,可食部のカドミウム含量が国際基準値を超過することなく,土壌への重金属の蓄積程度も小さいと考えられる.

黒ボク土畑における下水汚泥肥料の施用によるサツマイモ-露地野菜体系での持続的な生産に関する研究(PDF:548KB)

小型ペーパーポット苗および半自動型野菜移植機を利用したカボチャ定植作業の省力化

満留克俊・池澤和広・園中光範

要約
カボチャ栽培における育苗および定植作業の省力化を目的に,紙筒でできた小型ペーパーポットによる育苗および半自動型野菜移植機を利用した機械定植がカボチャの育苗から定植作業および収量に及ぼす影響について検討した.小型ペーパーポット育苗は,ポリポットおよびセル成型による育苗に比べて小面積での育苗が可能で,育苗から定植に要する作業時間は少なく,省力的な育苗方法であった.また,根鉢が形成されていなくても育苗培地の崩壊は少なく,半自動型野菜移植機の利用を組み合わせることで,従来のセル成型苗では困難であった,生産性の高い育苗期間の短い苗に利用が可能となった.これにより,収量性を確保しつつ定植作業時までの作業時間が大幅に短縮された.

小型ペーパーポット苗および半自動型野菜移植機を利用したカボチャ定植作業の省力化(PDF:595KB)

鹿児島県産糖含有珪藻土を用いた野菜の土壌病害虫に対する土壌還元消毒法の確立

中川路光庸・加治俊幸・窪田瑛水・長野可奈・田中正一・上薗一郎

要約
鹿児島県県内の企業から産出される糖含有珪藻土を用いて,野菜地下部病害虫に対する土壌還元消毒法を確立するため,資材の特性調査と現地実証試験を実施した.資材には水溶性糖類が現物あたり141mg g-1含まれ,日光の当たらない屋外に4か月保管しても水溶性糖類の減少は認められなかった.また,資材に含まれる水溶性糖類は,土壌混和後24時間で消失することから,施用した当日中に灌水することが重要であることが明らかになった.資材に含まれる水溶性の無機成分含有率は低く,土壌施用による環境負荷は小さいと考えられた.糖含有珪藻土を用いた土壌還元消毒の施設栽培ピーマンに対する現地実証では,夏季の高温期において1.0kg m-2の施用量で土壌中の還元能が高まり,土壌中のネコブセンチュウに対して高い防除効果を示した.露地栽培ソラマメの現地実証では,夏季の高温期に糖含有珪藻土の畝内施用による土壌還元消毒と,通路灌水を組み合わせることで畝内土壌の還元能が高まり,露地栽培における新たな利用の可能性を見いだした.

鹿児島県産糖含有珪藻土を用いた野菜の土壌病害虫に対する土壌還元消毒法の確立(PDF:566KB)

黒毛和種肥育牛における米ヌカ給与が枝肉脂肪中のMUFA含量に及ぼす影響

浦底早紀・森岡春樹・古殿誠・坂下邦仁・川畑健次・谷山浩久

要約
黒毛和種肥育牛の枝肉脂肪中のMUFAおよびオレイン酸含量の向上を図るため,米ヌカの給与試験を畜産試験場と2箇所の肥育牛センターで実施した.畜産試験場において,出荷5か月前から米ヌカを15%給与した結果,枝肉脂肪中のオレイン酸含量が高い傾向が認められた.肥育牛センターにおいて,供試牛を同一種雄牛とし,出荷16か月前から600g/日の米ヌカを給与した結果,MUFAおよびオレイン酸含量が有意に高い値を示した.一方で,いずれの試験においても米ヌカの給与量が多くなると増体量が小さくなる傾向も示された.これまでの試験結果から,黒毛和種肥育牛のMUFAおよびオレイン酸含量向上を図るとともに増体に影響を及ぼさないためには,米ヌカの給与水準や給与時期,種雄牛について考慮する必要があることが明らかとなった.

黒毛和種肥育牛における米ヌカ給与が枝肉脂肪中のMUFA含量に及ぼす影響(PDF:659KB)

泌乳持続性が高いホルスタイン種乳用牛群の作出とその特性の検証

岩﨑駿・上野紀衣・東山崎達生・山﨑彦樹・谷山浩久

要約
乳用牛の生涯生産性向上を図るため,畜産試験場の母牛群に,(独)家畜改良センターが示す総合指数(NTP)上位40頭内で泌乳持続性が高い種雄牛の精液を交配し,約10年間にわたり後継牛群を作出してきた.これら牛群のデータを分析した結果,世代が進むに従い,泌乳曲線が平準化するとともに,305日乳量も高くなった.繁殖成績や乳質に影響はみられず,泌乳前期のボディコンディションスコアの変化も小さくなった.雌牛の泌乳持続性の向上は,泌乳持続性が高い種雄牛により容易に改良可能であり,改良された牛群は泌乳前期の急激な乳量増加が緩和されるため,供用年数が延長されるとともに,生涯生産性の向上が期待される.

泌乳持続性が高いホルスタイン種乳用牛群の作出とその特性の検証(PDF:760KB)

アニマルウェルフェアに対応した採卵鶏ケージによるストレス緩和効果,生産性および経済性

森元瑞穂・髙橋敬祐・東原大・川畑明治

要約
アニマルウェルフェア(AW)に対応したエンリッチドケージ(付帯設備有:750cm2/羽)およびエンリッチャブルケージ(付帯設備無:750cm2/羽,450cm2/羽)について,従来型ケージであるバタリーケージ(350cm2/羽)とストレス緩和効果,生産性および経済性を比較検討した.AW型ケージは従来型ケージと比較し,採食行動が少なく,毛繕いが多く,ストレス指標である血漿中コルチコステロン濃度が低い傾向にあった.また,外貌の損耗率も低く,生存率,ヘンハウス産卵率,飼料要求率などの生産性への悪影響はなかった.卵質は区間に差異はなかったが,付帯設備(止まり木および巣箱)のあるAW型ケージで汚卵率が増加する傾向であった.経済性では1羽当たりの粗利益が従来型ケージを上回る傾向にあったが,単位面積当たりの飼養羽数が半分以下となるため,面積当たりの粗利益は,AW型・750cm2/羽が従来型の約50%,AW型・450cm2/羽が従来型の約75%となった.AW型ケージは従来型ケージと比較し,ストレス緩和効果があることが示唆された今後は,コスト削減のための集約的養鶏への応用と,アニマルウェルフェア卵の消費拡大を図っていく必要がある.

アニマルウェルフェアに対応した採卵鶏ケージによるストレス緩和効果,生産性および経済性(PDF:551KB)

よくあるご質問

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農政部農業開発総合センター企画調整部

電話番号:099-245-1114

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