更新日:2022年3月22日
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畜産技術情報(沖永良部島・与論島)
ローズグラスの栽培技術
1特性
- イネ科の暖地型牧草で,草丈90~120cm,当地域では越冬可能な永年草。
- 干ばつにはやや弱いので,畑かんのかん水効果は高い。
- 高温30℃以上はかえって生育が停滞する(低温期も生育停滞)。
- 酸性土壌は生育を阻害するので,pH6.5程度に矯正する。
2土づくり・施肥
(1)土づくり
- 秋または春に堆肥を2t/10a程度施用し,秋に施用する場合はできれば1~2月に掃除刈りする。
- pHが低い場合,炭カルや石灰などを投入する。
(2)基肥
- 堆肥を施用した時は,化成肥料は少なめに施用する(尿素で5kg/10a程度施用)。
(3)追肥
- 刈取後の追肥は,尿素で10kg/10aを目安に施用する(多くても尿素は15kg/10aまで,20kg/10a以上では硝酸塩中毒の恐れあり)。
- 干ばつ期,低温期は伸びが悪いので,施用量を減らす(播種時に尿素で5~8kg/10a程度施用)。多肥は硝酸塩中毒の恐れあり。
(4)その他
- ここでは尿素の施用量を目安に掲載しているが,堆肥の施用量が少ない農家は特に,加里・リン酸を含む化成肥料を施用すべき(毎回施用せずとも,刈取毎に入れる追肥を尿素と交互する等でよい)。
- 尿素の施用量は,窒素量を基準に計算しているので,他の化成肥料を施用する場合は窒素量で換算する。
3刈り取り
- 播種後,初期生育が良ければ3か月で刈り取れる。
- 刈り遅れや倒伏は,再生力を弱くしたり,次作での欠株を生ずる原因になる。
- 刈り取りは地際から5cm位高刈りし,再生を促すこと。
- 年5~6回刈取を目標に,母牛用は出穂期~開花期に,子牛用は出穂前~出穂期に刈り取る。
- 刈り遅れは,むしろ減収となり栄養価が低下する。
4硝酸塩中毒に注意
最近,粗飼料からの硝酸塩による急性中毒が多く見受けられる。原因は次のような硝酸塩が蓄積しやすい状況が重なり発生していると考えられる。
- 播種後数年経っても植え替えせず,収量を上げるために化成肥料(特に尿素)を大量に施用している。
- 飼養頭数の割に飼料畑が少なく,狭い畑に必要以上の堆肥や化成肥料が施用されている。
- 牛の糞尿が十分に発酵されないまま施用されている。
- 生育を促すため,かん水し,その後短期間で刈り取っている。
- 梅雨の晴れ間に,飼料作物が硝酸態窒素を吸い上げたタイミングで刈り取っている。
サイレージや乾草にすると低下すると言われるが,それほど急激な減少は期待できないので,過信しないこと。
5その他注意事項
- ローズグラスの被覆割合が50%を切ったら植え替える(できれば3年毎を目処に)。
- 被覆割合が減少すると,シロバナセンダングサやギシギシ等の雑草が侵入する場合があるので,登録されている除草剤で防除する。
- 除草剤散布後は,使用した除草剤の登録内容に従い,牛に給与しない(刈取しない)期間を設ける。
- 夏場は収量が倍増するので,畑かん施設等があれば定期的にかん水する。梅雨明け後~9月頃は干ばつ期があり,さらに効果的である。また,潮風害対策でも効果がある。
- 埋設型のスプリンクラー(固定配管)が無い場合は,移動式のスプリンクラー(レインガン)を利用しよう。
- 当地域では,飼料作物はローズグラスが一般的であるが,収量は多くはなく,低温期の収量減等考慮すると,飼料畑面積に余裕のある農家向きである。
- 飼料畑が少ない(不足する)農家は,夏作で長大飼料作物(ソルゴー・スーダングラス等)を作付けし,冬作はエンバクとイタリアンライグラスの混播とする等,年2回作付による収量確保を検討する。
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