更新日:2022年5月17日
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本県は九州の南端に位置し,九州本土に属する薩摩・大隅の二大半島及び種子島,屋久島,奄美群島をはじめとする多くの離島からなり,東西約272キロメートル,南北約590キロメートルにわたる広大な県土を有しています。
その総面積は全国第10位で約9,187平方キロメートル,離島が県土面積の約28%と大きな比重を占め,43市町村からなり人口は約159万人(令和2年国勢調査)です。
本土は火山噴出物である火山灰,火山砂,火山礫,軽石層,いわゆるシラス層の丘陵台地が幅ひろく拡がり,平野に乏しい地形となっています。
中央部を南北に霧島火山帯が縦断し,霧島,桜島,開聞岳等の11の活火山が分布し,豊富な温泉にも恵まれています。
本土から西南にのびる島々は,喜界島,沖永良部島,与論島の低平な島を除いては,海面からそびえ立つ山体で構成され平地に乏しい地形となっています。特に屋久島は,面積わずか504平方キロメートルですが,1,936メートルの宮之浦岳をはじめ,永田岳,黒味岳など九州のいずれの山岳も及ばない標高を有しています。
本県は,温帯から亜熱帯まで広範囲の気候帯に属します。
本土の年平均気温は15~19度で,年間平均降水量は約2,500ミリメートルと,温暖多雨の気候です。
種子島,屋久島地方から奄美地方にかけての気候は,年平均気温19~22度で,年間平均降水量は2,800ミリメートル以上と亜熱帯気候に属します。
また,これらの降雨の大半は,梅雨期から台風期にかけて集中しています。
2021年(令和3年)7月豪雨では,8日から10日にかけて薩摩・大隅地方を中心に断続的に雨が降りました。9日夜遅くから10日昼にかけて局所的に猛烈な雨や激しい雨となり,10日の朝,鹿児島地方気象台は出水市,伊佐市,薩摩川内市,さつま町に大雨特別警報(浸水害・土砂災害)を発表して最大級の警戒を呼びかけました。この大雨で,八重山(薩摩川内市)で110.5ミリ,紫尾山(さつま町)で96.5ミリの1時間降水量を観測し,ともに観測史上1位の値を更新しました。また,さつま柏原と紫尾山(さつま町)では,8日~10日の3日間で553ミリの降水量を観測し,7月の月降水量(平年値)に匹敵する値しました。
本県にはシラス,ボラ,コラ,赤ホヤなど,火山噴出物由来の特殊な土壌が広く分布しています。代表的なシラスだけで県本土の51%(3,430平方キロメートル)を占めるなど,県土の大半を覆っています。
また,大規模な火山噴火活動によって形成された姶良カルデラ,阿多カルデラ,鬼界カルデラといったカルデラ地形を複数有しています。
特に,姶良カルデラは9万年~2万5千年前の間に形成されたもので,この時代の噴火で発生した火砕流の堆積物がシラス台地を形成しています。
シラスなど火山噴出物由来の土壌は水を含むと崩れやすく,今まで幾度となくがけ崩れや土石流等の大規模な土砂災害をもたらしてきました。
また,紫尾山,高隈山地,肝属山地や薩摩半島南部域,甑島,屋久島及び奄美群島には花崗岩類がみられ,これらの一部で風化が進みマサ土化しています。
県では,県民一人ひとりが安心・安全に暮らせる強靭な県土づくりを進めており,土砂災害対策については,砂防堰堤や斜面の保護などのハード対策とともに,警戒避難体制の支援などのソフト対策をあわせた総合的な取組を推進しています。
土砂災害の発生のおそれのある土砂災害危険箇所は,土石流危険渓流,急傾斜地崩壊危険箇所,地すべり危険箇所の3つに分類され,本県には,合計16,204箇所存在しています。
土砂災害危険箇所のうち,保全対象とする人家5戸以上等を保全する箇所4,952箇所を要施工箇所とし,このうち,令和3度末までに砂防関係施設を設置した箇所は1,803箇所で,整備率は約36%といまだ低い状況であります。
県民の安心・安全な生活を確保するため「重点事業」と「地域密着事業」に区分し,メリハリをつけて整備を行っています。
激甚災害対策特別緊急事業,特定緊急事業,災害フォロー箇所などの整備を推進
土砂災害の犠牲者となりやすい自力避難が困難な高齢者,児童等が利用している老人福祉施設,病院,保育所等における安全を確保する土砂災害防止施設の整備を推進
高齢者,障害者,乳幼児その他の特に防災上の配慮を要する者(要配慮者)が利用する社会福祉施設,学校及び医療施設等を,要配慮者利用施設としています。 要配慮者利用施設を保全する施設整備は,重点事業に位置づけ積極的に推進すると共に,ソフト対策として土石流などの危険な箇所に立地している要配慮者利用施設に係る土砂災害警戒区域等を指定するための基礎調査を優先的に実施します。 |
急傾斜地崩壊対策事業西迫地区
曽於郡大崎町西迫地内
総合流域防災(砂防)事業松崎谷
薩摩川内市鹿島町藺牟田地内
土砂災害による広域的な交通網の途絶等は,県民の社会経済活動に極めて重要な影響を及ぼすことから,保全人家を有し,国道や鉄道等の重要交通網を保全する土砂災害防止施設の整備を推進
火山砂防事業花倉第3谷
鹿児島市花倉地内
事業間連携砂防等事業(地すべり対策)日木山地区
姶良市加治木町日木山地内
これまで砂防関係施設の老朽化に係る対策として,総合流域防災事業の緊急改築等により,優先度の高い箇所から既設えん堤の改築など,順次対策を実施してきました。
長寿命化計画の取り組みとしては,2015年(H27年)3月に県版の砂防関係施設点検要領の策定,2016年(H28年)から2017(H29年)にかけて砂防・地すべり・急傾斜施設の点検マニュアル等を策定し,県内の砂防関係施設について順次点検・健全度評価を行い,2019年(H31年)3月に砂防関係施設の長寿命化計画(個別施設計画)を策定しました。
今後来る施設の大更新時代に備え,人員や予算が限られた中で,災害時も含めてインフラの機能を適切に発揮するためには,新技術等を活用した維持管理の高度化,効率化や機能向上型更新を実施し,持続可能なメンテナンスサイクルを確立する必要があります。
令和4年度からは,補助事業として『砂防メンテナンス事業』が創設され,これまで実施してきた砂防えん堤等の改築に修繕や更新等を加えた対策が可能になります。
また,長寿命化計画の策定・変更も補助事業の対象となり,施設のライフ・サイクル・コスト及びその縮減に関する具体的な方針,新技術の活用等による短期的な数値目標及びその効果を当該計画に記載することで,関係するインフラ施設全体において持続可能なメンテナンスサイクルの実現を図ることとしています。
危険性,緊急性の高い箇所及び地元の要望等を総合的に判断し,優先度の高い箇所から実施しています。
砂防堰堤及び渓流保全工により,直下流の人家及び避難路(県道77号,町道)等を土石流から保全しています。
通常砂防事業西之川
熊毛郡屋久島町
擁壁工・法面施設により,人家及び市道等を保全しています。
鹿児島市田上地内
火山噴火等に起因する火山泥流,火砕流,溶岩流等の突発的かつ大規模で広範囲におよぶ異常な土砂の流出によって発生する災害に対して,火山地域における住民の安全確保のため,情報伝達に必要な機器を設置しています。
1渓流環境の再生
すぐれた自然環境,良好な街並み・歴史・伝統などの社会環境を持つ地域の渓流や,周辺に地域の計画に基づいた整備が実施・計画されている渓流において,景観や親水性の向上,生態系の回復を図り,周辺の地域環境にふさわしい良好な渓流環境を再生しています。
2魚がのぼりやすい渓流づくり
鹿児島県内の河川に生息する貴重な魚類としては,奄美5河川に生息が確認されているリュウキュウアユが代表的で,現在,奄美市(旧住用村)の山間川に魚がのぼりやすい渓流づくりとして魚道を設置し,魚が自由に遡上・降下できるように生態系に配慮しています。
3水と緑豊かな渓流づくり
周辺の緑豊かな自然環境を踏まえて,地域づくりと一体となった多自然型の水と緑豊かな渓流づくりを進めています。
4間伐材を活用した施設整備
砂防施設整備に当っては,地元から生産される間伐材を積極的に活用しています。
近年発生した土砂災害では,土砂とともに多量の流木による被害がみられたことから,これらを踏まえ,今後の砂防事業における流木対策にあたっては,透過型構造を有する施設の整備の推進や,既設砂防堰堤の改良,また,前庭保護工における流木捕捉工の設置等を行うことにより流木捕捉効果を高め,流木対策を適切に推進していきます。
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