更新日:2022年3月15日
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野生動植物は,地球上の生物,生態系の一部として人間と共存している。野生動植物はまた,人類の生存の基盤である生態系の基本的構成要素であり,日光,大気,水,土等とあいまって,物質循環やエネルギーの流れを担うとともに,その多様性によって生態系のバランスを維持しており,食料,衣料,医薬品等の資源としての利用のほか,学術研究,芸術,文化の対象,生活に潤いや安らぎをもたらす存在として,また,遺伝子資源の活用の面からも,私たちの豊かな生活に欠かすことのできない役割を果たしている。
他方で,急激な近代化と人口増加が生態系の過剰利用などを招き,自然破壊を引き起こし,野生動植物の生存を脅かしてきたことも事実である。こうした問題を解決するためには,人間の社会経済活動を自然保護と調和したものとしながら,生物資源の賢明な利用を図っていくことが必要である。
その際,重要なことは,生物多様性の保全であるが,野生動植物は,生態系,個体群,種等の様々なレベルで成り立っており,それぞれのレベルでの多様性の保全を図ることが必要である。なかでも,種は生物相・生態系を構成する基本単位であり,その保全は極めて重要である。
しかし,現在,地球上では,過去約40億年の生命の歴史上,かつてない速さで野生動植物の種の絶滅が進行している。我が国においても,人間活動による種の生息地又は生育地(以下「生息地等」という。)の破壊や減少,さらに乱獲や移入種による在来種のかく乱等により,多くの種が絶滅し,あるいは絶滅の危機にひんしている。
種の絶滅は,自然生態系の多様性を低下させ,そのバランスを変化させるおそれがあるばかりでなく,人類が享受することができる様々な恩恵を永久に消滅させる。
本県は,南北600キロメートルにも及ぶ広大な県土を有し,豊かな自然に恵まれており,哺乳類46種,鳥類419種,は虫類44種,両生類26種,汽水・淡水産魚類約200種,昆虫類約15,000種,維管束植物約3,100種など多種多様な野生動植物が生息し,又は生育している。
また,地形的に九州の南端に位置し,南西諸島をはじめ島しょが多いこと,気候的に亜熱帯から温帯への移行地帯であることや,地殻変動により大陸との断続を繰り返したという南西諸島の地史的経緯などから南限種,北限種,固有種など学術的に価値がある種が多い。
これらの野生動植物は,県民の生活基盤である自然環境の維持のため大切な役割を果たしており,県民の豊かな生活に欠かすことのできないものとなっている。しかしながら,平成24年度から2か年にわたって希少野生生物調査を行った結果,県内においても絶滅のおそれのある野生動植物の種が約1,400種にものぼることが明らかになっている。
国レベルでは,生物多様性保全のために生態系や野生動植物の生息地等の保護の促進,絶滅のおそれのある野生動植物の保護の強化などを求めた「生物多様性条約」に基づき,我が国の基本方針及び今後の施策の展開方向を示す「生物多様性国家戦略」が平成7年に策定され,その後,数回にわたり改訂が行われてきている。
本県では,平成20年に制定された生物多様性基本法(平成20年法律第58号)第13条の規定により,鹿児島における生物多様性の保全と持続可能な利用に関する基本計画として「生物多様性鹿児島県戦略」を策定している。
また,野生動植物の種の保存を目的として,絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号)が制定され,平成25年には,希少野生動植物の保全を一層推進するため,同法が改正され,違法取引に対する罰則の強化等が盛り込まれた。
しかし,絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律で保護の対象とされているのは,国レベルで絶滅のおそれが高い,限られた種であり,本県に生息し,又は生育している多くの希少野生動植物を保護するには十分でない。
このため,本県の多くの希少野生動植物の保護を図るためには,絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の保護の対象となっている種と同様に,きめの細かい,かつ,総合的な対策が求められている。
県内に生息し,又は生育する希少野生動植物の保護施策を推進するに当たっての基本的な考え方は,次のとおりである。
⑴希少野生動植物の保護に対する県民一人ひとりの認識が重要である。このため,希少野生動植物の捕獲,採取,売買等を行わないようなモラルの向上や生物多様性の重要性,本県の自然環境の現況や成り立ち等について普及啓発を図るとともに,家庭,学校,社会教育の場等で,積極的に環境教育を推進する。
⑵今日,野生動植物の生存を脅かしている主な要因は,過度の捕獲・採取,人間の生活域の拡大・縮小等による生息地等の消滅又は生息・生育環境の悪化等であり,希少野生動植物の保護を図るには,これらの状況を改善することが必要である。このため,生物学的知見等に基づき,特に保護を図る必要がある希少野生動植物を明らかにした上で,その個体の捕獲・採取の規制を行うとともに,必要に応じて,個体の譲渡し・譲受けの監視,生息地等における行為の規制等の措置を講ずる。
⑶希少野生動植物保護のためには,生息地等の状況を把握し,必要に応じて現地監視等を行うことが必要である。このため,施策の推進に必要な各種の調査や希少野生動植物保護推進員の設置などの措置を講ずる。
以上の施策は,県民の理解と協力の下に,人と野生動植物の共存を図りながら推進する必要がある。
⑴指定希少野生動植物については,県内に生息し,又は生育する絶滅のおそれのある野生動植物で,次のいずれかに該当するものの中から選定する。
ア既に個体数が著しく少なく,その存続に支障を来しているもの
イ個体数が著しく減少しつつあり,その存続に支障を来すおそれがあるもの
ウ生息地等が減少しつつあり,その存続に支障を来すおそれがあるもの
エ生息・生育環境が著しく悪化しつつあり,その存続に支障を来すおそれがあるもの
オ生息地等における過度の捕獲又は採取により,その存続に支障を来すおそれがあるもの
⑵指定希少野生動植物は,規制措置により効果的に保護対策が図られる野生動植物の中から選定することとする。ただし,鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成14年法律第88号)等他法令により保護されている野生動植物については,その生息・生育等の状況を検討し,保護のための規制内容が重複し新たな効果が期待できない場合は選定しない。
⑶指定希少野生動植物の選定に当たっては,保護対策が効果的に図られるよう,商取引の対象として採取・捕獲されやすい動植物であること,種名が確立した動植物であること,専門家でなくても判別が可能な動植物であること等を考慮する。また,種類としての識別が容易な大きさ又は形態を有する動植物を指定することとする。
鹿児島県希少野生動植物の保護に関する条例(平成15年鹿児島県条例第11号。以下「条例」という。)に基づく規制の対象となるのは,指定希少野生動植物の生きている個体とする。
なお,条例第11条における所持等の禁止の対象となる個体の加工品は,標本,はく製など種を容易に識別することができるものとする。
⑴捕獲等の規制
指定希少野生動植物の個体の捕獲,採取,殺傷又は損傷については,その動植物の保護の重要性にかんがみ,学術研究又は繁殖の目的その他その動植物の保護に資する目的で行うものとして知事の許可を受けた場合を除き,原則として,これを禁止する。
⑵事業等の規制
特定希少野生動植物については,その個体の譲渡しの業務を伴う事業(特定事業)を行おうとする者に対し,届出を求める。よくあるご質問
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