鹿児島の環境(特集:かごしまの生物多様性について~未来へ託す 彩り豊かで個性的なかごしまの自然)
はじめに
本県は,南北600キロメートルに及ぶ広大な県土を有し,日本で初めて国立公園に指定された霧島,世界自然遺産に登録された屋久島,世界的にも貴重な動植物を有する奄美群島,毎年1万羽以上渡来する出水平野の特別天然記念物「ツル」など,他の地域にない優れた自然環境に恵まれています。このかけがえのない恵み豊かな自然環境を大切に保全し,活用しながら,次の世代に確実に継承することは,現代に生きる私たちの使命であると考えています。
「環境」は,21世紀における人類の共通課題であり,今後様々な行政展開が集中的に求められると考えております。このため,県では,平成21年4月から「環境部」を新たに設置し,かごしま将来ビジョンやマニフェストに掲げた「環境先進県として,地球を守る低炭素社会の実現への貢献」,「地球にやさしい循環型社会の形成」,「自然あふれる癒しのかごしまづくり」に向けて,より一層の取組を推進しているところであります。
特に,地球温暖化は,その予想される影響の大きさや深刻さから見て,人類の生存基盤に関わる最も重要な環境問題であることから,温暖化対策推進条例を制定し,県民,事業者,行政が一体となって温室効果ガスの排出を削減するなど,地球を守る低炭素社会の実現に向けて,積極的な取組を進めることとしております。
また,廃棄物の排出抑制や減量化,リサイクルの推進を図るとともに,公共関与による産業廃棄物管理型最終処分場の整備を推進するなど,循環型社会の形成を図ることとしております。
さらに,緑豊かな森林や美しい海岸線,希少な野生生物など,本県の豊かな自然や環境を守るため,奄美群島の世界自然遺産登録へ向けた取組や,大気,水環境等の保全対策を推進するなど,自然あふれる癒しのかごしまづくりを進めることとしております。
このような取組を通じて,地球温暖化を防止し,地球環境を守るとともに,ふるさと鹿児島のかけがえのない環境を守り育て,次世代に引き継いでまいりたいと考えております。
この白書は,平成20年度における鹿児島の環境の現状と施策の内容・成果を取りまとめたものであり,この白書が,県民の皆様の環境に対する認識や意識を高め,環境保全に向けた取組の参考になれば幸いです。
平成22年2月
鹿児島県知事 伊藤 祐一郎
特集:かごしまの生物多様性について~未来へ託す 彩り豊かで個性的なかごしまの自然~
生物多様性とは‥‥生きものや自然の個性豊かなにぎわい
○多様性には3つのとらえ方があります
1.生態系の多様性
海・川・里山・干潟などいろいろなタイプの生態系があることです。
鹿児島県は南北600Kmに及ぶ長さを有し,幅広い気候帯を背景とし,照葉樹林からブナ林まで様々な生態系が存在します。
また,人手が入った里山もあれば原生的な自然も残っています。さらに島嶼部では,独自の生態系が成立しておりサンゴ礁の北限域ともなっています。
2.種の多様性
たくさんの種類の生きものがいることです。それぞれの種は環境に適応してきた進化の歴史的産物であり,かけがえのない存在です。
鹿児島県は,植物や動物でも生物地理学上の重要な分布境界線を含むことから,極めて多様な生物が息づいています。
鹿児島にしかいない多くの個性的な生きものが暮らして います。
3.種内(遺伝子)の多様性
同じ種の間でも地域によって様々な個性や特徴を持っていることです。こうした違いがあることで生物は環境の変化などに適応しています。
鹿児島県は島が多く,地形も複雑で同じ種とされる生きものでも独自の進化の過程として,個性的な特徴を持つ生きものの集団が成立しています。
○かごしま生物多様性マップ
○「共にあるよろこび」を未来に引き継ぐために
○生物多様性条約と締約国会議の日本での開催
●生物多様性条約
包括的に生物多様性の保全や持続可能な利用を行うことを目的に,1992年にリオ・デ・ジャネイロで開催された地球サミット(国連環境開発会議)で採択されました。
●COP10(生物多様性条約第10回締約国会議) (2010年10月18日~29日)
条約締約国(193の国と地域)は概ね2年ごとに集まり,多様な生物の保全と,生物資源の持続可能な利用などについて話し合いを行っています。 2010年は「生物多様性2010年目標年」であり,又「国際生物多様性年」でもある節目の年。 新たな国際的な目標を決めるなど重要な役割を担う第10回締約国会議が名古屋市で開催されることとなっています。世界各地から約1万人の参加が見込まれています。
○生物多様性を守るためのしくみ
●生物多様性基本法(2008年6月施行)
生物多様性に関する施策を総合的・計画的に推進することで,豊かな生物多様性を保全し,その恵沢を将来にわたって享受出来る社会を実現することなどを目的としています。
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生物多様性の保全
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生物多様性の持続可能な利用
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予防的・順応的な取組方法
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長期的な観点
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地球温暖化対策との連携
を基本原則としています。
※持続可能な利用とは
人間の生存に欠かすことのできない基盤となっている自然環境の恵みを将来に亘って分かち合えるよう (上手に)利用していくこと
※順応的な取組とは
生態系の変化に関する的確なモニタリングとその結果に応じて対応を柔軟に見直していくこと
●生物多様性国家戦略
生物多様性についての,国の基本的な施策の方向性等についてまとめられたものです。1995年に初めて策定され,第三次のものまで策定されていますが,国は新しい戦略を策定中です。
○生物多様性の保全の為に様々な制度や施策が行われています。主なものは以下のとおりです。
●種の保存法
国内希少野生動植物82種が指定され,生息地等保護区の設定や保護増殖事業が行われています。
鹿児島県の動植物としては,アマミノクロウサギやベッコウトンボ等動物5種,植物3種について保護の取組が行われています。藺牟田池は,ベッコウトンボの生息地として全国9カ所ある生息地等保護区のうちの一つとなっています。
●希少野生動植物の保護に関する条例
動物15種、植物27種が指定されており,これらの種については捕獲や違法に捕獲した個体の保持,譲り渡し等が禁止されています。
●自然公園法と県立自然公園条例
県内には二つの国立公園,二つの国定公園及び九つの県立自然公園があり,鹿児島県の自然の骨格にあたる部分の保全と適切な利用に役立っています。
●自然環境保全法と自然環境保全条例
屋久島が原生自然環境保全地域,稲尾岳が自然環境保全地域に指定され原生的な自然環境や優れた自然環境の地域の保全が図られています。また,条例により木場岳,万九郎の両地域を自然環境保全地域に指定しています。
○生物多様性に向けた様々な取組
○屋久島世界遺産地域について
平成5年12月,日本で初めて世界自然遺産に登録された屋久島世界遺産地域は,世界的に特異な樹齢数千年のヤクスギをはじめ,多くの固有種や絶滅のおそれのある動植物が生息・生育しており,海岸部から亜高山帯に及ぶ植生の典型的な垂直的分布がみられるなど,特異な生態系と優れた自然景観を有しています。
こうした,屋久島の貴重な自然環境を保全し,豊かな生物多様性を後世に伝えて行くため「エコツーリズム推進法」に基づく協議会を設置し,増加している利用人数のコントロールや自然観光資源の保全方策を検討しています。また,近年,ニホンジカの食害による農作物や貴重な生態系への被害も指摘されており関係機関による取り組みが始められています。
○奄美大島の生物多様性について
○奄美の自然を学ぶ
奄美・琉球諸島はアマミノクロウサギやアマミヤマシギなど数多くの固有種の生息・生育地になっているほか,北限域のサンゴ礁がみられ,世界的にみても生物多様性保全上重要な地域です。
県では,この奄美・琉球諸島の世界自然遺産登録の早期実現に向けて,地元市町村や国の関係機関などと連携しながら,国立公園などの保護地域の指定や普及・ 啓発活 動などに取り組んでいます。また,アマミノクロウサギなど希少な野生動物の保護増殖事業や野生化 したヤギの防除対策事業が進められています。
○ツルの保護対策について
出水地区に飛来する「ツル」は,国の特別天然記念物に指定されており,その保護が図られています。
ナベヅルについては,世界の約9割が飛来しているとされており,世界的に貴重な越冬地となっています。毎年一万羽以上が飛来します。
○ウミガメの保護対策について
鹿児島県は世界的にみても重要なウミガメの上陸・産卵地です。全国的にも例が少ない保護条例を制定し,捕獲を禁止するとともにウミガメの上陸数調査等の実施や監視員を置くなどその保護に努めています。
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