ホーム > 地域振興局・支庁 > 鹿児島地域振興局 > 地域の宝箱!~地域フォトライブラリ~ > 伝統行事の宝箱 > 多彩な芸能を堪能できる花尾神社秋の大祭
更新日:2020年6月17日
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鹿児島市郡山にある花尾神社にて毎年開催されている秋の大祭で奉納される伝統芸能について紹介します。
花尾神社は島津氏初代の忠久(ただひさ)が建保6(1218)年に父・源頼朝(みなもとのよりとも)と母・丹後局(たんごのつぼね),僧・永金(ようぎん)を祀ったものといわれており,境内には丹後局等の古石塔もあります。
大祭は元は丹後局の命日である旧暦8月12日に行われていましたが,昭和47(1972)年に秋分の日を大祭日としました。
現在は,毎年,秋分の日に,「花尾の太鼓踊り」,「西上の太鼓踊り」,「大平の獅子舞」,「岩戸の疱瘡踊り」の4つの伝統芸能の奉納があります。
また同日には,鶴丸城跡から花尾神社までの約17kmを歩く「蟻の花尾詣」という時代行列もあり,古式ゆかしい装束の一行が祭りに花を添えています。
《大平の獅子舞》
花尾町に伝承されている太鼓踊りで,江戸後期に編纂された『三国名勝図会』にはすでに,旧暦8月12日に神社の前庭で踊られていることが記載されており,古くから奉納されていたことがわかります。
他の太鼓踊りと同様,朝鮮の役からの島津義弘凱旋記念,また士気の鼓舞のために踊ることになったという説もありますが,踊られている日にちから,丹後局等の慰霊であるとともに,病害虫や風水害などの防除を祈って奉納されていると考えられています。
現在の花尾の太鼓踊りは,昭和23(1948)年に復活されたものといわれ,それ以前の空白の時代に,それまであった歌が途絶えてしまいました。
その後も,過疎問題などでしばらく踊られていませんでしたが,昭和47(1972)年に秋分の日を大祭日に決め,再度踊られるようになりました。
役としては,青壮年に小中学生が加わった約20名からなる鉦(かね)と,壮年が中心となる十数名の太鼓があります。
鉦は赤袖のシャツの上に京花染の陣羽織を着用し,黒のモモヒキに白足袋,草履といういでたちで,頭には白ハチマキの上に陣羽織を被り,長さ1メートルの太刀の模型を背後の帯に下から上に差しています。
太鼓は白衣に白い短パン,黒い脚絆に白足袋,草履で,頭にはハチマキの上に大きな鍬形を付けた烏帽子状のカブトを被ります。さらに背中には先端に色とりどりの色紙を付けた8本の竹ヘギを巡らせた,長さ5メートルほどある矢旗と,矢旗の両脇に鳥毛を飾った1メートルの竿の,計3本を差したカリコ(負い台)を背負っています。
鳥居から境内まで鉦や太鼓を奏しながら進む道楽と,境内で踊る口の庭・中庭・楽・末の庭という4種類の庭踊りを踊ります。
《太鼓》
《鉦》
《道楽の様子》
《道楽は4列縦隊で進む》
東俣町西上に伝承されている太鼓踊りで,朝鮮の役や関ヶ原の合戦の際に兵士を激励するために島津義弘がつくらせたといわれています。
昭和初期には,五穀豊穣・病害虫防除祈願,一之宮神社(鹿児島市東俣町)の島津忠久公主祭奉納のために踊られていました。
衣装は花尾の太鼓踊りとよく似ていますが,初庭・中庭・末庭という3部構成という点や隊列の組み方などが異なっており,他の鉦と音色の違う二番鉦が踊りの途中で打つ「入れ鉦」の高く響き渡る音は印象的です。
また円形になって踊る際に太鼓衆の2名が円の中を外周とは逆に廻る「中回り」があることも特徴の一つです。
《太鼓》
《鉦》
《道楽の様子》
《中回りの様子》
花尾町大平に伝承されているもので,元は旧暦2月12日に踊られるものでした。
手踊りと棒踊りからなる前踊りと,獅子が登場する後踊りで構成されています。
後踊りの獅子舞は,農作物を荒らす獅子に,父をかみ殺された息子がその敵討ちをするというストーリーをなす庭狂言で,獅子舞の原初形態が見られる,素朴で民俗学的に価値の高いものとされています。
前踊りの手踊りや棒踊りの踊り手はかすりの着物にハチマキ・たすき掛けをし,草鞋を履きます。
後踊りの獅子舞には捕り手,獅子,子獅子が登場しますが,捕り手は膝までの着物に白帯をし,襷に白ハチマキを締め,刀の下に白い房の付いた長刀(なぎなた)を持っています。
獅子,子獅子は紺の法被に白帯を締め,腰下に脚絆,黒足袋に草鞋といういでたちに獅子頭を付けます。
獅子の頭は孟宗竹のヘギを組み,それに金や銀の紙を貼り,耳は赤い紙でできています。口は大きく,あごの上下には白い歯がたくさん生えており,赤い舌もあります。体は青い布とシュロでできた毛に覆われています。
この他,前踊り・後踊りを通して,場取りと呼ばれるシュロの面等で仮装した道化が登場し,場を盛り上げます。
《獅子と戦う様子》
《獅子を先導する場取り》
《捕り手》
花尾町岩戸に伝承されている踊りで,かつて天然痘が蔓延したときに,その予防と早い治癒を願って踊られたといわれています。
境内まで太鼓の楽で進む道楽,手踊り・傘踊りを含む先踊り(前踊り),この疱瘡踊りの核となるシベ踊り,後踊りなどから構成されています。
役としては,黒装束の大シベ持ち,豆絞りの手ぬぐいを頭巾として被り,赤の長襦袢と浴衣(絣)に白足袋を履いた踊り子,おたふくなどの面をつけ頰被りをしたメンなどがあり,音楽には三味線,太鼓,拍子木を使用する風流な踊りです。
この数年は踊られていませんでしたが,平成30(2018)年に神社の鎮座800年を記念する秋の大祭から,また奉納されるようになりました。
《岩戸の疱瘡踊り》
これらの伝統芸能は,大人から子どもまで地域が一丸となり,今なお伝承されているもので,この大祭での披露をひとつの目標に,地域を一層活気づけています。
各団体に所属する子どもたちはもちろん,花尾小学校には文化財少年団があり,文化財保護に取り組んでいます。
《鉦つきの子どもたち:花尾の太鼓踊り》
《子獅子に扮する子どもたち:大平の獅子舞》
この秋はぜひ郡山で,稲穂が色づきはじめた田に彼岸花が映える美しい景色と,地域の子どもたちも熱心に取り組む伝統芸能をお楽しみください。
《花尾神社の鳥居》
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