閉じる

  •  
 
 

閉じる

 
 

ホーム > 産業・労働 > 雇用・労働 > 労働委員会 > 委員リレーコラム > 県労働委員会「委員リレーコラム」

更新日:2024年4月1日

ここから本文です。

県労働委員会「委員リレーコラム」

第152回

あらためて「公労使」(PDF:98KB)

あらためて「公労使」

公益委員

鹿児島県労働委員会の公益委員に就任して6年になろうとしています。
任まもないころ、このリレーコラムに「公労使」と題して、労働委員会が行う個別労働紛争あっせん制度の特長は、公益を代表する委員、労働者を代表する委員、使用者を代表する委員の三者で構成されていることであると書きましたが、それから5年を経て、改めてこのことについて考えてみたいと思います。
働委員会は、戦後まもなく、集団的労働紛争を解決するための機関として労働組合法に基づいて設置されました。集団的労働紛争を解決し、労使関係の安定をめざすためには、上記のような三者構成は不可欠です。以来、労働委員会はもっぱら集団的労働紛争の解決にあたり、個別的労働紛争(個々の労働者と事業主との間の労働紛争)を解決する役割は、主として裁判所や弁護士が担っていました。
の後の平成13年10月に「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、これに基づいて各地の労働局(国の地方支分部局)に「紛争調整委員会」が設置され、弁護士、大学教授等の学識経験者があっせん委員となって当事者双方の合意が成立するようあっせんし紛争を解決に導くという制度が始まりました。この法律は、地方公共団体においても個別労働関係紛争の予防及び自主的解決を促進するための施策を講ずべきことを定めていたため、同法の施行に伴い、都道府県知事の委任を受けて多くの都道府県労働委員会が個別労働関係紛争の解決を目的とするあっせん業務を行うようになりました。
前後して、各地の弁護士会にも、労働紛争に限らず各種法的紛争を解決するための紛争解決センターが設置され、平成18年には、裁判所において、従前の訴訟、調停という手続に加え、労働審判という労使紛争を迅速に解決するための新しい司法手続が始まりました。
成19年4月には、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律が施行され、労働紛争に限らず、民事上の紛争全般について、民間の事業者も国の認証を得て和解の仲介(あっせん等)を業務とすることができるようになりました。
働組合にも、独自の労働紛争の相談窓口や解決制度を有しているものが多くあります。
このように裁判上、裁判外の多くの個別労働紛争解決制度がある中で、労働委員会は、個別労働紛争の解決についてどのような役割を果たすことが期待されているのでしょうか。
れらの個別労働紛争解決制度の中で、確実に費用がかからないといえるのは、労働局と労働委員会ですので、まず、この二者を比べてみます。
は、平成13年に鹿児島労働局に紛争調整委員会が設置された当初から6年間、委員会の会長としてあっせん事件を担当しました。設置早々から結構な賑わいでしたが、年々扱い件数は増加し、その間大変忙しく過ごしました。
際、鹿児島労働局と鹿児島県労働委員会の扱い事件数には大きな開きがあります。ただ、これは仕方がないことです。労働局には、ハローワークと労働基準監督署という大きな窓口がありますし、事業主に対する監督指導権限もありますので、頑張ってみても事件数ではかなわないと思います(と言っても、認知度を高めるための努力をすべきことはいうまでもありません)。
た、労働局のあっせんは、原則として一人の委員があっせん手続を担当します。日程調整のしやすさと言う点からすると、迅速性においても労働局には一歩及ばないかもしれません。
かし、労働委員会には、「公労使」という強力な武器があります。
判所の労働審判も、労働審判官1名(裁判官)と労働審判員2名(「労働関係に関する専門的知識経験を有する者」と定められており、労側、使側の区別はないが、実際には、労側1名使側1名で構成されている)の三者構成となっており、創設以来、制度の利用は増え、訴訟に移行することなく審判手続のみで解決する割合も高く、労働紛争解決のための効果的な制度として定着しています。三者構成の利点が発揮された結果でもあろうと思われます。ただ、労働審判員は、「中立かつ公正な立場において」職務を行うべきことが定められており、労使の立場、経験によって得られた専門性を生かすことは求められていますが、いずれかの当事者に対し、労使それぞれの立場に立って積極的に働きかけるというような役割は求められていません。また、手続的に簡易とはいえず、弁護士が代理人として手続に関与するのが通例です。
れに対し、労働委員会の労使委員は、「労働者を代表する者」、「使用者を代表する者」と定められていて、「中立かつ公正な立場において」というような定めはありません。労使委員は、個別労働紛争のあっせん手続において、それぞれ、労働者あるいは使用者の代表として、それぞれの当事者の立場を十分理解した上で、その立場にたって紛争の適正な解決に資する助言や説得をすることができます。個別労働紛争のあっせん手続には、審判、命令等による強制力はないので、当事者の合意によってしか紛争の解決はできません。双方当事者を合意に導くためには、労使委員の共感を伴った説得が大きな力を発揮していると思います。なお、私は、個別労働紛争の解決は、労使委員の力に負うところが大であると考えていますが、公益委員も主として法律的見地からの説得をしますし、手続を主催するという職責もあります。これは反省を込めて言うのですが、公益委員は、労使委員がその役割を十分に発揮できるような流れを作って手続を進行すべきであると考えています。
念ながら、労働委員会における個別労働紛争あっせんの取り扱い件数は、発足以来伸び悩んでいます。
しかし、労働局のあっせん制度で解決しなかった案件について労働委員会のあっせんを利用して解決できた例もあります。このあっせん制度では、相手方の出席を強制することができませんが、労使委員は、席に着くことを渋る事業主らに対し、理を解いて出席を促すこともできます。
労働委員会には、このような公労使三者構成の利点を存分に生かして、困難案件をも含む個別労働紛争について、高い解決能力を発揮することが期待されていると思います。

過去の委員リレーコラム

第151回(R6年3月)「危機管理」(PDF:251KB)

第150回(R6年2月)「安心・安全」(PDF:273KB)

第149回(R6年1月)「スチュアート・スミス先生」(PDF:97KB)

第148回(R5年12月)「2023年やだ!もう12月!」(PDF:104KB)

第147回(R5年11月)「おもいで話」労働者委員:木佐貫美保(PDF:69KB)

第146回(R5年10月)「委員雑感」公益委員:田中佐和子(PDF:107KB)

第145回(R5年9月)「老いるということ」使用者委員:吉田健朗(PDF:214KB)

第144回(R5年8月)「年をとることを楽しむ」労働者委員:海蔵伸一(PDF:213KB)

第143回(R5年7月)「緑濃き桜並木」会長:采女博文(PDF:114KB)

第142回(R5年6月)「鹿児島ダーウィン」使用者委員:上野総一郎

第141回(R5年5月)「ジェンダー平等のうねりを起こせ」労働者委員:下町和三(PDF:225KB)

第140回(R5年4月)「「今」の習慣」公益委員:田中佐和子(PDF:102KB)

第139回(R5年3月)「求められる量から質への転換」使用者委員:水淵大作(PDF:249KB)

第138回(R5年2月)「「定年退職」がなくなる日」労働者委員:片野坂昭彦(PDF:145KB)

第137回(R5年1月)「大河ドラマ覚書」公益委員:長野信弘(PDF:169KB)

第136回(R4年12月)「人違い」使用者委員:濵上剛一郎(PDF:91KB)

第135回(R4年11月)「「当たり前」だったことが「当たり前」ではなくなった」労働者委員:岡良二(PDF:209KB)

第134回(R4年10月)「ゴッババ」公益委員:新納幸辰(PDF:128KB)

第133回(R4年9月)「お悩み相談」使用者委員:柳田由美(PDF:81KB)

第132回(R4年8月)「ヒナ鳥」労働者委員:木佐貫美保(PDF:219KB)

第131回(R4年7月)「よりよい「対話」ができる社会に向けて~小学校の「対話」授業から考える」公益委員:森尾成之(PDF:150KB)

第130回(R4年6月)「名刺について」使用者委員:米盛庄一郎(PDF:224KB)

第129回(R4年5月)「バイアス」労働者委員:海蔵伸一(PDF:227KB)

第128回(R4年4月)「春、旅立ちの季節に」会長:采女博文(PDF:141KB)

第127回(R4年3月)「個人商店」使用者委員:上野総一郎(PDF:221KB)

第126回(R4年2月)「母の3年祭に想う」労働者委員:東健一郎(PDF:88KB)

第125回(R4年1月)「「墓じまい」の準備」公益委員:田中佐和子(PDF:57KB)

第124回(R3年12月)「所変われば品変わる」使用者委員:水淵大作(PDF:109KB)

第123回(R3年11月)「真摯な労使関係とワークルールを」労働者委員:下町和三(PDF:69KB)

第122回(R3年10月)「体験的香港ビジネス事情」公益委員:長野信弘(PDF:140KB)

第121回(R3年9月)「オリンピック」使用者委員:濵上剛一郎(PDF:66KB)

第120回(R3年8月)「あふれる情報,真実は?」労働者委員:村屋高広(PDF:95KB)

第119回(R3年7月)「弁護士は「敷居が高い」?」公益委員:新納幸辰(PDF:109KB)

第118回(R3年6月)「わたしなりの持続可能な開発目標」使用者委員:柳田由美(PDF:58KB)

第117回(R3年5月)「私の3年」労働者委員:木佐貫美保(PDF:68KB)

第116回(R3年4月)「61才のおじさんを見入らせる藤井聡太二冠」公益委員:北﨑浩嗣(PDF:87KB)

第115回(R3年3月)「不完全であること」使用者委員:米盛庄一郎(PDF:218KB)
第114回(R3月2月)「『奇貨』」労働者委員:海蔵伸一(PDF:249KB)
第113回(R3年1月)「夢をみる」会長:采女博文(PDF:153KB)
第112回(R2年12月)「ねずみ年」使用者委員:上野総一郎(PDF:77KB)
第111回(R2年11月)「最低賃金が改定されました」労働者委員:東健一郎(PDF:253KB)
第110回(R2年10月)「猫との暮らし」公益委員:田中佐和子(PDF:81KB)
第109回(R2年9月)「2020年の夏~豪雨・猛暑・コロナ~」使用者委員:水淵大作(PDF:246KB)
第108回(R2年8月)「言葉の使い方は難しい」労働者委員:下町和三(PDF:214KB)
第107回(R2年7月)「「廃仏毀釈」について」公益委員:平田浩和(PDF:254KB)
第106回(R2年6月)「「早く収まって」」使用者委員:濵上剛一郎(PDF:97KB)
第105回(R2年5月)「継続したコミニュケーションの必要性」労働者委員:村屋高広(PDF:82KB)
第104回(R2年4月)「異常気象」公益委員:新納幸辰(PDF:130KB)
第103回(R2年3月)「職場のご機嫌・不機嫌」使用者委員:柳田由美(PDF:63KB)
第102回(R2年2月)「4月1日施行の民法改正を思う」労働者委員:日高実禎
第101回(R2年1月)「夢」公益委員:采女博文(PDF:159KB)
第100回(R元年12月)「ONETEAM!」使用者委員:米盛庄一郎(PDF:82KB)
第99回(R元年11月)「外国人労働者受け入れ」労働者委員:奥恵利美(PDF:103KB)
第98回(R元年10月)「「働くこと」を考える」公益委員:田中佐和子(PDF:128KB)
第97回(R元年9月)「忘れてはいけない,忘れがちなこと」使用者委員:吉冨秀介(PDF:86KB)
第96回(R元年8月)「選挙の投票率にみる主権者を育む教育の重要性」労働者委員:原園正敏(PDF:134KB)
第95回(R元年7月)「係長等特別研修を終えて」会長:宮廻甫允(PDF:153KB)
第94回(R元年6月)「SDGsの取り組み」使用者委員:久永修平(PDF:159KB)
第93回(R元年5月)「5月といえば」労働者委員:下町和三(PDF:237KB)
第92回(H31年4月)「「これまで」と「これから」の自分」公益委員:平田浩和(PDF:261KB)
第91回(H31年3月)「豊かな人生とは」使用者委員:濱上剛一郎(PDF:90KB)
第90回(H31年2月)「「平成最後の年」寛容な社会を!」労働者委員:村屋高広(PDF:111KB)
第89回(H31年1月)「公労使」公益委員:新納幸辰(PDF:77KB)
第88回(H30年12月)「「休む」ということ」使用者委員:柳田由美(PDF:102KB)
第87回(H30年11月)「外国人労働者の現状と課題」労働者委員:日高実禎(PDF:88KB)
第86回(H30年10月)「高度経済成長期への郷愁」公益委員:采女博文(PDF:91KB)
第85回(H30年9月)「「働く」について一考察」使用者委員:米盛庄一郎(PDF:63KB)
第84回(H30年8月)「LGBTを知ることから」労働者委員:奥恵利美(PDF:65KB)
第83回(H30年7月)「半日旅行」公益委員:田中佐和子(PDF:59KB)
第82回(H30年6月)「くり返される、「やってはいけない」こと」」使用者委員:吉冨秀介(PDF:42KB)
第81回(H30年5月)「教員の長時間勤務が日本人全体の働き方に及ぼす影響?」労働者委員:原園正敏(PDF:88KB)
第80回(H30年4月)「AI(人工知能)の驚くべき進化」会長:宮廻甫允(PDF:47KB)
第79回(H30年3月)「明治維新150周年と歴史的公文書」使用者委員:久永修平(PDF:63KB)
第78回(H30年2月)「労働の変質について」労働者委員森田周一(PDF:59KB)
第77回(H30年1月)「天吹について」公益委員:白尾國豊(PDF:88KB)
第76回(H29年12月)「労働委員会を通じて」使用者委員:中村博之(PDF:46KB)
第75回(H29年11月)「「労働委員会委員」になって」労働者委員:村屋高広(PDF:62KB)
第74回(H29年10月)「かすかな記憶-夏・秋・冬」公益委員:采女博文(PDF:106KB)
第73回(H29年9月)「「LABOR」を考える」使用者委員:米盛庄一郎(PDF:61KB)
第72回(H29年8月)「本格的な台風・集中豪雨のシーズン前に」労働者委員:日高実禎(PDF:98KB)
第71回(H29年7月)「睡眠負債」公益委員:田中佐和子(PDF:67KB)
第70回(H29年6月)「通勤を取り巻く痛切なる事情」使用者委員:吉冨秀介(PDF:58KB)
第69回(H29年5月)「貧困と教育難民」労働者委員:奥恵利美(PDF:51KB)
第68回(H29年4月)「職場でのトラブルの予防のために」公益委員:末永睦男(PDF:81KB)
第67回(H29年3月)「自主造」使用者委員:久永修平(PDF:62KB)
第66回(H29年2月)「組合専従になって思うこと」労働者委員:川俣広孝(PDF:83KB)
第65回(H29年1月)「労使関係のこれからを考える」会長:宮廻甫充(PDF:64KB)
第64回(H28年12月)「チャレンジすることの大切さ」使用者委員:中村博之(PDF:46KB)
第63回(H28年11月)「小中学校の道徳の時間が教科になり子どもたちの道徳性を評価するらしい」労働者委員:原園正敏(PDF:74KB)
第62回(H28年10月)「最近思うこと」公益委員:白尾國豊(PDF:76KB)
第61回(H28年9月)「熊本地震が教えた鹿児島の観光を考える」使用者委員:伊地知司(PDF:76KB)
第60回(H28年8月)「バスガイドについて」労働者委員:森田周一(PDF:89KB)
第59回(H28年7月)「新米委員の思い」公益委員:采女博文(PDF:72KB)
第58回(H28年6月)「観光客の来訪が教えてくれること」使用者委員:吉冨秀介(PDF:62KB)
第57回(H28年5月)「脳トレとプラス思考」労働者委員:奥恵利美(PDF:56KB)
第56回(H28年4月)「論語における人間観察法」公益委員:末永睦男(PDF:63KB)
第55回(H28年3月)「「働く事」を学ぶ(労働教育)」使用者委員:久永修平(PDF:107KB)
第54回(H28年2月)「いの目の天啓と戯れ」労働者委員:大島幹敏(PDF:115KB)
第53回(H28年1月)「互譲の精神」公益委員:原田耕藏(PDF:64KB)
第52回(H27年12月)「雇用と国際化」使用者委員:本坊浩幸(PDF:56KB)
第51回(H27年11月)「ワークルール」労働者委員:下町和三(PDF:41KB)

 

よくあるご質問

このページに関するお問い合わせ

労働委員会労働委員会事務局総務課

電話番号:099-286-3943

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?